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『　1年2組　学級日誌　』　 (新長編小説)　
　　　　　　・・・半世紀前の女子高校の学級日誌・・・
　　　　　　　　（昭和47〈1972〉年４月～４８年３月まで）

　　






【２月23日（金）　晴　５２番　Ｙ・Ｔ】

　Ｍ先生、三学期になって

「怒りっぽくなられた」ですね。

ずっと以前の日誌に「

人間は、歳を取ると

怒りっぽくなる」

と書いてありましたが、

Ｍ先生もそうなんですか？

「２７才まで信じていたが、

そうでない事も知りつつある」

と書いてありましたから、

きっとそうなんですね。

私は、よく友達と話し合ったりします。

もちろん

良いことも悪いこともあります。

こういう事を書いたり言ったりするのは、

やっぱり私達生徒が

Ｍ先生の事を

本当に身近な人と

感じているからと思います。

その先生が

「だんだん人間を信じられなくなる」

なんて……（沈黙）

……私達生徒も人間ですから。

私達の事も

「信じられない」事になるのですか？

そんなのいやです！

私達は学校へ来ると

「校則」に縛られ、

先生方の強いつよーい圧力の下で、

ハヒ・ハヒ言いながら

もがいているのです。

そんな中でも

生徒の良き理解者である「先生」が

一人位いらっしらなくては

イケナイのです。

その一人が「

Ｍ先生」なのだと私は思います。

Ｍ先生は、

私達が入学して来た時のままで

いらっしゃる方が良い。

こんな事を言うのは絶対に

ナマイキだけど言わせて下さいね。

私達は先生の

「応援団」だからです。

いつまでも応援し続けます。

　ところで、もうすぐ

「期末考査」。

３学期はこれ一回で

決まるなんて残酷。

私は何故か勉強する気になれない。

「数学③」がさっぱり解らない。

基本的なグラフの書き方が……。

早く言えば、

三学期に習った所が

ぜんぜん解らないのです。

その「数学③」が

１日目にあるんだからショック死にそう。

うちの家はあまり

勉強にうるさくないのです。

たとえば、今日だって、

母・・・今から

「遠山の金さん」が始まるよ～～～。

私・・・今日はええねん！

来週から期末テストやから！

母・・・１時間位ええやん。

１週間に１回しかないねんよ！

私・・・（　沈黙　）

うん、見る！見る！

と、まあこんな具合なんです。

でもいつもこんな調子じやないんですよ。

時々「教育ママ」を

発揮することがあります。

まったく変な親です。

　今 家の庭には

「沈丁花（じんちょうげ）」の花が

咲き匂っています。

すごくいい気分！

一粒だけならそんなに

良い香りじゃないのに、

こんなのが２０～３０位になると、

すごくいい香り。

「団結」ですね。

人間も、１年２組のみんなも、

こうでなくっちゃいけないのになぁ。

現実は？

　ところで、

Ｍ先生の家には

「お風呂」がありますか？

うちは

「　大衆浴場　」なんです。

あ～～あ「　内風呂　」が欲しい！！！

だって、私は、

「お風呂大好き人間」なのです。

寒い冬にお風呂につかっているなんて、

天国ですね。

町内会に二つの銭湯があって

毎日入れるのがまた仕合わせで。

あ～～、しあわせで～～す。

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　-僕も「風呂」が大好きです。

今は家に風呂があるから

確実に「一日一回」入浴する。

どんな事があっても入浴する。

夏はシャワーだけの時もあるが、

必ず入浴する。

しかし、本当を言うと、

風呂は「

銭湯（せんとう・大衆浴場・風呂屋さん）」が

一番よい。

何故なら、

広い中を十二分に身体をつけて

のびのびと入れるからだ。

（２時か３時頃、

人がいないときは、

ちょっとだけ

「犬かき」をして泳ぐ。

その後、タイルの上で寝る。

横になった初めは、

タイルの冷たさでちょっと

ヒンヤリしているけれど、

心地良い温度になってきて寝る。

人生はバラ色だ。

おおらかな気持ちになる。）

そうだ、君が書いているように、

ぼくはこの頃

「怒りっぽい」。

それは、

仕事が忙しいこともあるが、

「銭湯」で昼寝をしていないからか。

今度の日曜日には、

銭湯に行こう。

精神的・肉体的にリラックス・

リラックスしよう！！！

　「怒（おこ）りっぽい」というか

「怒（いか）り」について、

三木清（みききよし）の

『　人生論ノート　』の中に

こんな事が書かれている。

　「ひとは　軽蔑されたと感じた時

もっともよく怒（おこ）る。

だから、自信のある者は

あまり怒らない。

彼の名誉心は

彼の怒が短気であることを防ぐであろう。

本当に自信のある者は静かで、

しかし

威厳（いげん）を具（そな）えている。」

「怒りを避（さ）ける

最上の手段は

機知（きち・ウイット）である。」

本当にそうだね。

僕が怒り出したのは

ぼく自身に自信がなくなったからなんだ。

去年には自信はあった。

しかし今　自信が少なくなっている。

悩んでいる。

スランプ

（一時的にうまくいかない状態。不調。不振。）

なんだ。

すぐ良くなると思う。

良くなるようにしようと思う。

そうだ、次の休みには、

必ず「銭湯」に行こう。

リラックスしよう。

　怒りをなくするには、

三木清が書いている

「機知（ウイット）」と、

もう一つ

「銭湯」だ。

　ありがとう、

君にお礼を言います。

大事なことを思い出させてくれました。

必ず

「銭湯」に行って

「怒り」吹き飛ばして来ます。　

　　　以上