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『 1年2組 学級日誌 』 (新長編小説)
・・・半世紀前の女子高校の学級日誌・・・
(昭和47〈1972〉年4月~48年3月まで)
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【2月14日(水) 晴 46番 M・K】
(45番さんが風邪でお休みなので、
46番が先に書きます。
そして、
「私立の入学試験」のため
明日は、お休みです。)
こんにちは先生、
私は今ものすごく
興奮 しています。
興奮しているというよりも
涙 が出てきそうな状態です。
何故?
それは、今日の
6時間目のHR(ホームルーム)のことです。
「 部落差別 」のテーマを
私達グループが
発表した時のことです。
今また興奮して来たので、
ちょっと時間を置きます。
今日の先生が
大きな声を出されましたが、
その態度に、
私は大きな 反発 を持ちました。
先生のあの態度は、
完全にエチケット違反です。
今日の授業の流れを
振り返って書いていきます。
私達はこれまで、
「部落差別」ということについて、
意見を出しあいました。
そして、話し合う事が
差別をしているのではないか?と
思ったのです。
そうじゃありませんか?
私達のグループの中に、
全く「部落」というものを知らなかった人が
多かったのです。
それに知っていても私達は、
後ろ指を指す者は、
一人もいないと思っています。
かといって、
このままにしていてはいけない、
と思うのですが、
私達に何が一体できるのでしょうか。
この点で私達はつまずきました。
そしてそう一点。
もし相手の人が
部落の人だったらどうでしょう。
現実に、親は猛反対でしょう。
それでも家出して
嫁に行ったとします。
そこで食べ物や風習の違いが
はっきりと出てきます。
その時です。
ここで先生は大きな声をだされ、
「違う食べ物とは、
どんな食べ物ですか?」
とおっしゃったのです。
それに対して、
私は解答を出しませんでした。
先生は、多分わたしたちが、
世間一般のものの考え方で
発表したと思ったのでしょう。
しかし、違います。
私の知ってた限り、
どんなものを食べると思いますか?
ジャガイモだけ、と言うような
やさしいものではありません。
先生は、
「フクラシ粉」を
食べたことはありますか?
あの時私は何も言わなかったのは、
あまりの先生の大きな声にビックリして、
心の中の何かが音をたてて
崩れていきそうだったからです。
あの時
「知っています!」と行っていたら、
私は多分 泣いていたでしょう。
「大げさだ!」と
おっしゃるかもしれませんが……。
私は中学校の時
「弁論部」に入っていました。
だから少々のヤジなど
気にしていませんし、
それだけのものに対抗するだけの
度胸がありました。
それに、ヤジの中には、
決して質問めいたことを
言ってはいけません。
いくら自分が疑問に思った部分があっても、
その時は
「それは違う」
「間違っている」
という言葉に留めるのです。
何故なら、
疑問に思った部分は、
後でちゃんと質問するのです。
『最後まで聞く』
これを守らなくてはならないからです。
だから、先生に
何か腹立たしいものを感じたのです。
これが、私の発表の時だけなら、
腹を立てなかったと思います。
しかし、次の人にも、次の人にも、
先生は最後まで聞きませんでした。
そして途中で「発言」されました。
なぜですか?
教えて下さい。
この辺で話題を変えます。
2月14日
「 バレンタインday 」
今日は、女性にとって大変大事な日です。
最近
騒がれる様になってきました。
「チョコレート会社」の
陰謀(いんぼう)と言う人もいますが、
私達女性は、
心臓がワクワクします。
若いって良いですね。
(年寄りのおばちゃんみたいな発言……)
帰り際に、
職員室のM先生の机の上を見ました。
「チョコレートの山」になってました。
M先生のファーンがいかに多いか
分かりました。
他の男性の先生方の机の上も
「チョコレートの山」。
女子高の男性の先生は、
仕合わせですね。
この話を、家に帰って来て話すと、
弟(中学2年)が、
「オレ、将来、M先生みたいに、
女子高の先生になるわ、
決めた!」
って、言ってました。
母が、
「それやったら、
勉強いっぱいせんとなられへんで!」
と、突っ込みを入れました。
弟、
「まかしとき、
将来に向かって、
勉強、バンバンするわ!」
と部屋に戻りました。
母は、
「M先生に
御礼言わんとあかんな!」
と、喜んでいました。
話しは変わって、
M先生は、
今年も担任をもたれますか?
私もってほしいな。
先生、しんどいかしら?
私、今まで、M先生のような先生に
巡り会わなかったの(ゴマ)。
だから、先生、
もっと良い先生になってほしいの。
「良い先生」とは?
学校の言うなりはダメ!!
生徒の言うなりもダメ!!
人間性があり、
説得力のある先生!!!!!
これがそうだと思います。
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君が言うように、
ぼくは
「完全なエチケット違反」をしました。
許して下さい。
謝ります。
認めます。
ぼくは君達グループのまとめを聞いていて、
実はガッカリでした。
全くの期待はずれでした。
君達の年代は生まれた時から
「民主主義・平等」を
学んできました。
その君達の考えが、
例えば結婚について、
君達のご両親の年代と変わらなかった。
ぼくは発表を聞いていて、
悲しかった。
ところが、そのつぎに
「食べ物や風習」の違いの
言葉が出てきた。
君の言葉だと
「部落」の人達すべてが
そうであるようになってしまう。
料理の仕方にしても、
それぞれの地方の
風俗習慣によって異なるのを、
それを取り立てて発信しては、
すべて全く異なったように受け取られる。
君達のほんのちょっとした発言は、
人によってものすごく
違ったように受け取られる。
今日の社会でも、
部落に対してものすごい
偏見(へんけんめ片寄った見方)で
みられているのは、
そういう人々の軽い発言が
重なっている事が多い。
次に、同情であってはならない事。
民主主義では、
同情(例えば「かわいそう」)はありません。
みんな平等です。
次に、社会ではまだ
職業や結婚の差別をしている現状で、
部落の人達の生活は
安定していません。
生活の安定をはかるために
建物を建てる事など國が行なっています。
今の社会では、まだ、
自分のしたい職業や会社に
入社出来ないでいる。
「部落」ということだけで。
それでいいのだろうか?
そういう精神的・経済的な
屈辱(くつじょく)を受けている。
それでいいのだろうか。
もう一度、
何故ぼくが声を荒げて言ったのか、
についてですが、
人のちょっとした
風俗習慣などの発言によって、
すべてがそうであると受け取られる事、
そして、多くの偏見に包まれていく事の
恐さ(怖さ)からです。
話しはかわります。
「担任」
今年も「持つか持たないか?」ですが、
分かりません。
一年間、
休みたい気もします。
この一年間頑張って
思い切り担任をやっていたので、
疲れているみたいです。