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『 　1年2組　学級日誌　』　 (新長編小説)　
　　　　　　・・・半世紀前の女子高校の学級日誌・・・
　　　　　　　　（昭和47〈1972〉年４月～４８年３月まで）

　　



【10月2日(月)晴　32番　Ｎ・Ｔ】

　私も

「９月29日３０番ＤＦ」さんと同じく、

ＨＲの時間は、

ものすごくショックだった。

15才の乙女の心には、

大いに打撃を受けた。

男女の関係は、最後には、

性という型で表されると思うけど、

まだ、私には

全く考えられないことである。

　私達　女の子　が集まって、

ダベリングｏｒ

しゃべりんぐの話題のナンバーワンは、

“男の子の事”。

でも、この頃、男の子についても、

内容が変わってきたと思う。

ちょっと前までは、

男子のフェイス・スタイル・

ヘアー・ファッション・・・ｅｔｃ

と　デート　の事・・・。

空想を楽しんでる

ような感じだったけど、

このごろは、ちょっと現実的になって、

“・・・こんな時、

男の子が……したらどうする？”

なんて、

仮定から話を始めるようになったと思う。

ちょっと進歩したのかも・・・。

　私は男の子を

“白馬にまたがる王子様”

的にみてたけど、

このごろは、

身の危険を感じるようになって来た。

　私は、ある男の子達に

聞いて見たことがあるの。

　「男の子って、

あんまり好きでもない女の子と、

ｋｉｓｓ位できるの？」

って。そしたら、

　「そんなん、当たり前や！！！」

って言ってました。

男の子ってすごく割り切っているのネ。

女の子は、

そういう風には考えられないけど。

　それから、Ｍ先生に聞きたい

ことがあるの。

男の子と付き合うのは、

１対１でないといけないかなぁ？

男の子は、１対１を望むの？

私が望むのは、

コカコーラのＣＭ見たいな

「ファミリーファミリー」ていうか、

仲間って感じ。

　男の子と言っても

いろんなタイプがあると思うの。

スゴイ独占欲の強い子とか、

反対に彼女なんか何人いても

いいって感じの子とか、

影からそっと見守るっていう感じとか、

年上の女性に憧れる子とか、

妹みたいに可愛がる子とか、

ケンカ仲間とか……ｅｔｃ

色々あって面白いネ。

　私は今のところ

ファミリーファミリーでいきたいな。

で、何時かはＢＦより少し進歩して

恋人までいかない子が欲しいな。

私は好みが難しいからなかなか……。

気軽に映画や花月やコンサートに行けて、

女の子とだべってる

みたいな男の子がいいわ。

　今日の結論、

今の私は　“恋しい”“愛してる”　

なんてことは、考えられない。

やはり、ファミリーファミリー。

　話し変わって、

この頃の「高校生の男の子」って、

だいたいの子が「　煙草　」を

吸ってるみたい。

Ｍ先生どう思う？

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　昔、映画で

『　幸福　』という題の外国映画を見た。

女性監督でドイツ映画だったと思う。

カラーが実に奇麗(きれい)だったけど、

その映画の内容についてふれてみたい。

それは、君ないしは君たち女の子が

不思議に思う、

男の子の心理が分かると思うから。

　映画の最初に映し出されたのは、

のどかな公園の奇麗な風景だった。

その公園を二人の子供を連れた

若夫婦が歩いている。

周りの景色は美しいし、

四人の親子はにこやかに笑っているから、

この映画の題のごとく、

「　幸福　」なんだろうと思える。

　さて、この映画の　最後の場面　も、

始まりと全く同じ

(すなわち、四人の親子が

公園を楽しく歩いている)状態なのだが、

ただ一点だけ違うのは、

若夫婦の

「奥さん」が

別の人になっている、ということだ。

幸福そうに見える家族に

何があったのか、

がこの映画のテーマだ。

　何故奥さんが

別の人になったのか？

それは、相手のご主人が、

精神的肉体的にも、

全く同じだけ

別の女性を愛したからだ。

奥さんが、自分以外の女性と

関係を持っている主人にこう言うのだ。

　「あなたは、私ともう一人の女性と

どっちの方が好きなんですか？」

　男性は、こう答える。

　「どっちも同じだけ、

愛している！」

　この言葉の意味は、

“男性は、

一度に何人もの女性を

愛することが　可能　だ”

ということだ。

全部の男性とは言わないが、

心と身体で

別の人を愛することだってある。

君が書いている　男の友達の発言

「そんなん、あたりまえや」は、

それを意味している。

君及び君達には、この話しは、

まだ早過ぎるかもしれない。

しかし、将来の事を思う時、

この内容を認識しておく

必要があると思う。

さっきの映画の奥さんだった人は、

悲しいことに

「池に飛び込んで自殺」していた。

そして1年後

もう一人の女性と男の人は、

初めに映し出された公園で、

子供二人と楽しそうに歩いている。

『幸福』は、

端で見ていても分からない、

ことを　監督　は　表現　した。

１対１は、

やはりまだ君達の年齢では、

早いかもしれない。

君も書いているように、

ファミリーファミリーの方がいいと思う。

高校生の「　喫煙　」のことだけど、

そこからの「　非行化　」が恐ろしい。

何とかしなければ……。　

　　　以上

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