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『 1年2組 学級日誌 』 (新長編小説)
・・・半世紀前の女子高校の学級日誌・・・
(昭和47〈1972〉年4月~48年3月まで)
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【2月1日(木) 晴 36番 N・I】
今日は、{待ちに待った}
【 学級閉鎖 】になりました。
{ 流感 }になって、
苦しんでいる方々には、
申し訳ありませんが、
「 学級閉鎖 」で
2月4日の日曜日まで
「 お休み 」になりました。
私は、幸せです。
学校に来ていたみんなの瞳が、
「 学級閉鎖 」と聞いて
イキイキと輝いてたし、
急にウキウキしだしたって感じ。
今日は、やっぱり
他のクラスの子が
学校へ行って勉強している時に、
家でノンビリっていうのは、
気持ちの 良いもの だものね。
私、後8日で 16才 になるんです。
水瓶座・
天王星・
宝瓶宮……。
15才と違って、
16才って
おとなに近付いてるって感じ
(当たり前だけど)。
自分自身は分からないのに……。
いややな、あんまり早く
大人になりたくない。
ロマンチックに
夢見てる時が一番いい、
18才くらいまで。
「時間」なんてどんどん
過ぎて行ってしまうモン。
ホントこの高校生活の1年間だって、
すごく速かった。
いろいろな人に会いました。
いろいろなことがありました。
私にすれば一大事。
私にすれば画期的。
振り返ってみると、
やっぱりこのクラスよかったと思う。
楽しかったし、
イザって時には、団結する。
もう後少しだけど、
いい思い出にしたい。
南沙織の
「早春の港」って歌が好きです。
特に、
「故郷持たないあの人の、
心の港になりたいの」
ってところが……。
【2月2日(金) 晴】
続けて36番のN・Iの
私が書きます。
【 学級閉鎖 】のために、
休みが 3日半 あるので、
沢山書かないと
あかんみたいだから、
出来る限り書いて置きます。
あっ、この前の
「ストーブ」の事、
どうも、すいませんでした。
でも、 福祉委員 って、
どうすればいいのか、
ハッキリ分からへん。
ただ「ストーブ」つけたり消したり、
それに時々黒板のチョークを消したり……
それくらいのことしか
私には出来ないんですけど、
何かお気づきのこと
おっしゃって下さい。
私忘れっぽいところがある。
一つのことを気味悪いほど
覚えているときもある。
神経質になると思うと
無神経にもナル。
心が軽―く、明るーくナル、
すると瞬間的にふっと
気分が滅入る時もある。極端。
【2月3日(土) 晴のち曇】
今日は、【 学級閉鎖 】になってから、
初めて外出した。
土曜ぐらいは良いでしょう。
文房具屋さんで「便せん」買って、
それからチョコレートも買って、
そのチョコを食べながら、
この日誌を書いています。
良き友のヨッコに借りてた、
「 北杜夫 」の
『怪盗ジバゴ』を読みました。
北杜夫 前から好きだったけど、
「ジバコ」でもっと好きになりました。
この本は、私は絶対に
電車の中では読めないな。
何故って、
私は“ ゲラ ”だから、
車中で「 プッ! 」と吹き出したりして、
周りの人に“ ジローーリ ”ってことに
なりかねないから。
それからもう一人、
日本の作家では、
「芹沢光治良
(せりさわこうじろう)」が好きです。
中学二年の夏休みに、
家にあった
『巴里(ぱり)に死す』を、
その時は何気なく読んだのですが、
好きになったんです。
『愛と死の書』も読みましたが、
『巴里に死す』の方が好きです。
私、一度で良いから
外国に行きたいです。
ヨーロッパ。
だから、この本に「パリ」や
「スイス」が出てるのも
好きになった理由の
一つかも知れませんね。
(中2の十四才くらいの年齢は、
フランスに憧れるもんでしょう。)
この頃 お星さん を見るのが
癖(くせ)になったみたい。
「 地学 」で宇宙の事知っているけど、
ああいう理屈は分からない
(「地学」のカメ先生には悪いけど、
数字が出てくるもの……)。
ただぼーと 星を見てるんだけど、
一つだけ目立って
すごく輝いているのがある。
あんなんすぐ取れそうだけど、
何万光年もあるらしい。
(キダ先生のお子さんの名も
「光年」さん)
かつて子供だったことを
忘れずにいる大人は、
いくらもない。(S.T)
【2月4日(日) 小雨のち晴れ】
このところ
[ お姉ちゃん ]は、
料理やお菓子に凝っているから、
休みごとに、
なんやかんや作ってくれる。
その反動でこちらは
体重計のハカリの目盛りが増えるから、
胃腸薬がかかせないやら
大変なのです。
でも、今日のプリンは
まあまあ美味しかった。
ねェM先生、
この日誌、
どうなるんですか?
みんな二年生になったら、
M先生の机の中に
眠ってしまうんですか?
私思うんですけど、
コピーか何かできないでしょうか。
(お金がごっついいるね)
無理かな……、
やっぱり、でも、
高校1年2組の思い出として、
置いておきたいナ。
いつか、
『あの時は、
みんなこんな事を考えていたな……』
てことが、思い出せるし……。
でも、無理ならいいんだけど……、
本にして
『1年2組の学級日誌』
って題で 出版 出来たらいいのに……、
無理かな……。
では、この辺でさようなら、
明日は、友達とあえるぞーーーー!
お休みなさい。
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四日分を書いてくれて
ありがとう。
ぼくは、毎朝 日誌をもらって、
その日の空き時間
(一日に授業時間は3時間だから、
後の3時間のどこか)で書いている。
無論、いろいろ雑用があって、
なかなか落ち着いて書けない。
流感 による
【学級閉鎖】になって、
金曜・土曜の二日間は、
実にノンビリ空き時間を過ごした。
日誌も雑用も何もない。
それで本を読んでた。
『高校生の生活と心理』とか
『現代青年の意識と行動』etc……。
高校生の心理を扱ったものが主だ。
(ぼくも勉強しているのだ)
いろいろ読んだけれど、
やっぱり分からない。
一人ひとりみんな違うんだし、
特に実際に高校生と接していて、
本に書いてあるようなパターンで
割り切れないのを感じている。
そして、
いろいろ本を読んでいて感じたことは、
高校生の心理とぼくの心理と
ぴったり一致している事だ。
驚いた。
どうもぼくは、高校生と同じ、
思春期を向かえているらしい。
福祉委員について。
1学級内の「福祉」に関する
いっさいの事項を扱う。
2教室内の設備や装飾に留意する。
(快い気持ちで生徒が
授業出来るようにする。)
3ガスストーブのスイッチを
つけたり止めたりする。
(以前は、会計事務を担当していたが、
今は、金銭徴収はしない。)
以上、福祉とは「 幸福 」という意味です。
クラスのみんなが
幸福に成れるようにするのが、
福祉委員です。
お互いの幸福のために
頑張って下さい。
この「 学級日誌 」について。
君も書いているように、
この日誌をどうしょう。
ぼくにとっても、
君達にとっても、
ものすごく大事な大事な
「宝物」になった。
この一年間の全てが、
この中に詰まっているような気がする。
机の中に眠っているのは可哀想だ。
コピーにとるにはあまりに多すぎる。
今のところ8冊になる。
後3月まで1ヶ月あるから、
10冊になるかも知れない。
ページ数にして、
約1000ページになるだろう。
(1冊約100ページだから
10冊で1000ページだよ。)
すごい。
1000ページだ。
原稿用紙だと、
1ページ3枚から3枚半で、
約3000枚から3500枚になる。
すごいぞ これは。
トルストイの
『戦争と平和』が、
原稿用紙 3000枚 くらいだから、
それと同じになる。
すごい長編日誌だ。
誰かが書いてた
『大日誌辞典』。
本にするには、長すぎる。
(費用がすごい)。
将来、電話と同じように、
電線か電波で、
書いてる文字が
相手に飛んでいくようになれば、
好きな時に、
好きなように読めるので、
便利だね。
50年先かな?
その時まで何とか
生きていようね、みんな!!!
でも、みんな本当に、
よく書いてくれたよ。
本当にありがとう。
ぼくは最初、
みんなは半ページも
書いてくれないんじゃないか、
と思ったんだ。
嬉しいね。
みんなの努力を嬉しく思います。
この学級日誌、
まとめて「本」にしたいね。
「題」
はなんてのがいい?
副題は、
「高校1年生の日誌」
「女子高校生のクラス日誌」
「笑いと涙の学級日誌」
あるいは、
「わちきは1年2組だ!」……。
この日誌をどうするか、
いい案があったら、教えて下さい。
50年後を楽しみに・・・
以上