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『 1年2組 学級日誌 』 (新長編小説)
・・・半世紀前の女子高校の学級日誌・・・
(昭和47〈1972〉年4月~48年3月まで)
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【10月24日(火)晴 42番HM】
M先生!昨日の
「鞄の取り替えっこ」の事、気分が悪かったよ。
別に泣かなくて良いところで、
オイオイ泣いてしまった。
先生の早とちりが悪いのだ。
もうこんな事、
忘れて他のことに移ります。
テストが終わって、日曜日に、
母と姉と3人で 難波 に行った。
その時、姉の彼が来ていた。
私にUSAの「バルギーセーター」
万円もする物をくれた。
私は嬉しくなって、
いっぺんにその人の事を
好きになった。
もうすぐ本当の兄貴が出来る。
でも、姉がお嫁に行くと、
私は一人っ子になってしまう。
今でも我が儘なので有名な私なのに、
もっと悪い子になってしまうかもしれない。
私は寂しがりやなのだ。
だから今住んでる田舎は嫌いだ。
田舎の道を一人で走ると、
寂しくて淋しくて耐え切れなくなる。
だから人がいる所が好きです。
一人になりたくないんです。
だからM先生がよく
「一人旅はいいものだ」という事が、
私には良いことには思えません。
話しは変わって、
私は今とても
「バイク」に憧れています。
近所の子も24日に
実地検査を受けに行ってます。
受かると私 乗せてもらう約束しています。
そして、私も休みの日に
免許証を取りに行きます。
楽しみです。
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一昨日の「鞄の取り替え」の事、
本当に悪かったと思います。
違反の鞄を君のだと誤解し、
それを他の人に言ってしまった。
真相を見ずにやってしまっていた。
許して欲しい。
許して欲しいという言葉だけで、
君の名誉及び
心に傷を付けてしまった事を
償(つぐな)うことは出来ないけれど、
本当に許して欲しい。
ぼく自身 ものすごく 反省している。
君を疑った事はもはや
取り返しが付かないと思う。
君を疑い君を傷付けた事は、
取り返しが出来ない。
こんな小説がある。
ヘルマン・ヘッセの小説で
『少年の日の思い出』というのがある。
「蝶々(ちょうちょ)」の収集に
熱中する少年は、
自分の持っていない
「楓蚕蛾(ふうさんが)」という
美しい「蝶」を
友が持っているのを知り、
友がいない時に
その蝶を盗もうとして
ポケットに入れてしまう。
しかし、すぐにその悪に気付き
元に戻すのだが、
もう羽も触角もちぎれてしまって
もと通りではない。
彼は友に自分が盗もうとして
そうなった事を言いに行ったのだ。
許しを得るために。
しかし、友は 軽蔑の言葉 を
述べるだけだった。
その時の主人公の少年は、
こう悟(さと)った。
“一度起きたことは、
もう償(つぐな)いの出来ないものだ”
そして、彼は、自分自身に罰を与え、
二度としないために、
自分が今までに集めて来た「蝶」を
すべて指で粉々に押しつぶした。
ぼく自身、今、
君に対した行為で、
自分自身に
「罰」を与えなければならない。
一度起きた事は、もう償いの出来ない。
二度と同じ間違いをしないためにも、
ぼく自身の心に
罰を与えよう思っている。
話しは変わりますが、
「単車」の事、
十二分に気をつけて運転して下さい。
一つ間違うと
「命」にかかわる事です。
この日誌の
「4月19日」の
ぼくの文章をぜひ読んで下さい。
ぼく自身一度死にかけています。
以上
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