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パープル ・ サンフラワー(小説)

マルタン丸山




第七章  「アッシュ」の手引き・・・

( ビルの話 )

 



   1、 ラーゲル(収容所)内

「外人部隊」と呼ばれる

この部屋の囚人たちは、

じっと死人のように横たわっている。 

 朝食の後の休養を、

パイプベットの上で目を閉じて

味わっているのだ。

三十分もすれば、

「マイナス四十度五分」の

酷寒が待っている。

 ただ、タタール人だけは、

いつものように、

外の温度計を見に行った。

 「どうせ、今日もだめじゃ。

外の温度計は、どんなに寒くても

『マイナス四十度五分』以下に

ならないように細工されているんじゃ。

わしゃ泣きたいよ。」

 マンスノバじいさんが、つぶやいた。

 「そうかもしれない。

この冬将軍の吹雪が訪れて来てから二週間、

一度だって

『マイナス四十度五分』以下に

なったことがない。

『マイナス四十一度』なら、

囚人の労働を『中止』せねばならないから、

『マイナス四十度五分』にセットしてある

としか思えない。

卑劣なスピナーヤ・コージャ(豚皮め)」

 若いモンゴル人のグオルが、

吐き捨てるように言った。

 班長のダニーは、

二人の会話を聞くともなく、

ただ瞑想(めいそう)していた。

 最近、労働途中の警備が、

以前より厳しくなっている

ことに気付いていた。

監視員の昼の休息をかねたサボリも

短くなっているし、

いつも歯をむいた青眼のエスキモー犬も、

一頭増えている。

自分の脱走が遠のいていくのが

感じられていた。

その時、タタール人のナンギスが部屋に

飛び込んで来て、叫んだ。

「やった!『マイナス四十一度』だ!!」



 この声には、全員が頭を上げて、

起き上がった。

 「ほ、ほ、本当かや?!」

 「間違いない!本当だ!」

 「ヤッタゼ!」

 モンゴル人のグオルが叫んだ。

「外人部隊」の全員がベットから降りて、

踊りながらドアーを出て、

廊下を歩きだした。

他の部屋の囚人たちも聞きつけて、

後をついて来た。

長い廊下の突き当たりのドアーを出て、

荒れ狂う冬将軍に立ち向かった彼らは、

正面の柱に括りつけられた、

一メートルはある温度計を見詰めた。

 間違いなく、赤い水銀の先が

『マイナス四十一度』を指していた。

囚人たちは、代わるがわる覗き込んで、

歓声を上げた。

 突然、誰かが叫んだ。

「温度計に触るな!側に行き過ぎて、

体温で上がったらどうするんだ!」

「そうだ!そうだ!さがれ!さがれ!

触るな!」

 囚人たちは、後ろにさがり、

温度計を取り巻いて、踊りだした。

   その時、囚人達と温度計の間を、

冬将軍が思い切り割り込んできて、

吠えた。

誰かが、足踏みしながら寒さを訴えたので、

我を忘れていた囚人たちは、

震えながら木造の棟に戻った。





 『外人部隊』の連中は、

班長のダニーの報告を待った。

 正式の報告がない限り、

労働中止にはならない。

喜びと不安の交差した状態で、

部屋の中を歩き回った。





 ダニーが、いつもより遅く

部屋のドアーから、顔を覗かせた。

 マンスノバじいさんが、

一番に口を開いた。

 「班長!どうじゃった!」

 「『労働中止』だ!」

 その言葉で、部屋の全員が

飛び上がって喜んだ。

彼らに、それほどのエネルギーが、

まだあったとは思えない程の喜びようだ。

その中を、ダニーは、

『一人の男』を部屋の中に招きいれ、

自分のベットの下に座らせた。

そのベットは、

栗栖(くりす)のベットである。

 それまで飛び上がって喜んでいた、

モンゴル人のグオルが、

その男に気付き、ダニーに言った。

「班長、この男は誰だい?

……そこは、『Щ(シチャ)7』の

パープル・サンフラワー・栗須さんの

ベットだ。あれ……?」

 グオルが、男の胸元の白ペンキで

書かれた、『Щ(シチャ)7』の文字を、

まじまじと覗き込み、指さして言った。

 「……こいつ、栗須さんの番号を

付けてやがるぜ!」

 その声に囚人達は、踊るのをやめて、

クリーム色の眉と、

グレーの瞳を持った男の顔と番号を、

見比べた。

 ダニーが言った。

 「みんな、聞いてくれ!

新入りの『Щ(シチャ)7』だ。

名は、『ビル』だ!アメリカ人!」

 「アメリカ人?……じゃ、

日本人のЩ7は、

どうしたんだ?」

 タタール人のナンギスが尋ねた。

ダニーは、黙って目を伏せた。

 「まさか……まさか!……

パープルが病院に行って、

何日めじゃ?」

 マンスノバじいさんが、

誰となく尋ねた。

 ウズベク人で教師だったコンザスが、

自分のベットにもぐり、

上のベットの敷き板を覗き込んだ。

その板には、彼が入所し、

この部屋に入ってからの日付と

その日の出来事が、

イスラム語で略され、

爪で刻まれてあった。

 「今日で十三日だ!」

 「まさか……。」

 マンスノバじいさんが、絶句した。

 「じいさん、どういう事だ?」

 モンゴル人のグオルが、

マンスノバじいさんの肩に

手をかけて尋ねた。

 「わしゃー、忘れておっちゃよ……。」

 肩の力を落としながら、

物知りのじいさんが言った。

 「ラーゲルから病院へ入院した時、

『十日が期限』じゃ。

病気が治ろうが、治るまいが、

十日で病院から、

必ず連れ戻されるのが、

ラーゲルの法律なんじゃ。」

 じいさんは、鼻をすすりだした。

 「パープルが入院して、『十三日』め、

ということは、

パープルは……。」

 グオルが、かぶせるように、

大声をあげて叫んだ。

 「どういうことなんだ?」

「し……し……『死んだ』ということじゃ!

わしゃー泣きたいよ。」

 マンスノバじいさんが、

顔に分厚い両手の手袋をあてて、

泣き声を出した。

 グオルも大声を上げて泣き出した。

外人部隊のみんなも、

自分のベットに戻って、

毛布の中に身を沈めて泣き出した。





 少しして、

マンスノバじいさんが呟きだした。

 「あいつは、いい奴じゃった。

俺みたいな『ぐうたら』を、

いつも起こしてくれてよ。

俺がくたばった時にゃ、

スコップを持ってくれた。

俺が腹を空かしたら、

黒パンを分けてくれよった。俺が……」

 鼻をすすって続けた。

 「なんてこっちゃー。

俺の半分の若さで、

俺より何倍も力のある奴が、

俺より先にくたばっちまうなんて……。」

 また、鼻をすすり、

一息入れてから続けた。

 「おい、ウズベク・カザフ・キルギス・

トルメン・タジク、それに、カザフカス・

アゼルバイジャン・アルメニア人たち……」

 また、一息入れて言った。

 「アラーの神に祈ってやってくれ!

グルジアのアルメニアよ、

キリストにも伝えてやってくれ!

彼は、いい奴じゃったって……。」

 今度は、沈み込んで言った。

 「俺は、祈りなんて、

もうとっくに忘れてしもうた。

ロシア正教はいないのか?

それにヒンズーも……。

仏教は、こういう時には、

どんな祈りをするんじゃい?

みんな、みんな、日本人のЩ(シチャ)7・

パープリ・サンブラウス・クリャ……?

……グオルよ、この名前は、

あっちょるか?

……そう、そう、……ありがとう、

その栗須を祈ってやっちぇくれ……。

彼は、このみじめな現世のラーゲルから、

天国の神の元にめされた。

今は、暖かな柔らかい雲のベットの上で

眠っちょる。

……うらやましいね……。」

 今度は、思い切り鼻をかんで、続けた。

 「それに比べて、おれは?

厳寒の固いベットのラーゲルで生きちょる。

俺のような人間のくずは、

どうすりゃいいんだ。

死んでもいい、死んでるのと

同じ人間が生きちょって、

生きていて価値のある人間が

死んでいく……。」

今度は、立ち上がって声を張り上げた。

 「このままのソビエトは、

滅ぶしかない。

偉大な社会主義国、

ソビエト社会主義連邦共和国よ!

独裁主義共産党よ!

今、五十数年に及ぶ

『平和と平等と愛のマルクス』の

名において解体する!

今後、いかなることがあろうと、

一党独裁政治は、地球上に存在せず、

よって、このラーゲルは、解散され、

囚人はすべて、一市民として、解放される!

Щ7・パープル・サンフラワー・栗須よ、

汝の名において、

И(イー)8マンスノバ・アゼルバジャーは、

宣誓する!」

 誰かがその言葉に、

掛け声をあげて拍手した。

そして、部屋は静まりかえった。





 ダニーが、新入りのビルの側に座って、

今日の出来事を、英語で説明した。

 ビルは、今日の未明、

このラーゲルに着いたばかりだ。

 そして、栗須がそうだったように、

ロシア語が、理解できずに、

モスクワで逮捕され、ここに送られて来た。

 ビルがダニーに、英語で言った。

「なんとかしてここを出たい。

僕は大学の休暇を利用して、

モスクワにいっていただけだ。

ただ、『アッシュ』を持ってただけだ。」

「おお、『アッシュ』!お前さんもか?」

 ダニーが、やはり英語で尋ねた。

「じゃ、君も『アッシュ』の

不法所持で逮捕……。」

「この国は、どうなってるんだ。

自分の国で栽培し、

世界中の若者に売っておきながら、

自国では、所持するだけで、逮捕する。」

 「ヨーロッパのヒッピーだけじゃない。

ミュージッシャンも学生も、

普通の煙草のように吸っている。」

 「ヨーロッパだけじゃない。

アメリカの学生も市民も

みんな吸っている。

アメリカは、ベトナム戦争帰りの

帰還兵が持ち帰った。

今は、タイ産のもあるが、

元はソビエトだ。」

 「この国は、『アッシュ』を

独占販売して、

世界中のドルを稼いでいるんだ。」

 英語のやり取りを、全員が聞いていたが、

突然、トルクメン人のスパッチュが、

 「『アッシュ』?」

 と、その単語だけ耳に聞きつけて、

口をはさんだ。

 ダニーが答えた。

 「そう、『アッシュ』だ。」

 「『アッシュ』って、

『大麻(たいま)』のことだろう?

それなら、おらの村で栽培し、

精製しているぜ。」

 ダニーが英語で、ビルに通訳していた。

 「もともと、おらが村一帯に

自生しとるぞよ。

それが、政府のお役人さんがやって来てよ、

納税の代わりに納めることになっとる。

お上の重要外貨獲得商品らしい……。

おらが、それを知らずに吸っとったら、

逮捕されたのじゃ。」

スバッチュが、突然、力を入れて喋った。

「ただし!ただし!これからの大麻は、

吸っちゃならんぞ!

国の研究員が、

『大麻と芥子(けし)』を交配させて、

麻薬と同じような品物を栽培させとる。

こまったもんじゃ、

なんぼう金儲けじゃといえ……。

これから吸った者は、

みんな中毒になってしまって、

錯乱状態になるゾ!」

 ダニーがビルに、英語で通訳すると同時に

二人は、顔を見合わせ、そして、

口に手をあてて、吐き気をもよおした。







     2、・・・ ビルの話



(一九六八年・アメリカ・ワシントン)・・・





 二月。


 全米の新聞が、

一月三十日の南ベトナムの

『テト(旧正月)攻勢』を報じていた。

 ベトナム戦争始まって以来の

『ベトコン(反政府軍)』の反撃で、

サイゴン(旧南ベトナム首都・

現ホーチミン市)及び、

各主要都市が砲火をあび、

三日間で

『米兵二千人が死亡』したことが、

確認された。

 ケネディ大統領

(第三十五代アメリカ大統領・

一九六三年、ダラスにて暗殺される。)が、

一九六一年に参戦したベトナム戦争は、

七年間で『三万人』の若き米兵を、

あの世に送ったことになる。

 『なぜ、他国で若いアメリカ人が

死ななければならないのか?

なぜ、米国は、『世界の警察』に

ならねばならないのか。』

 なぜ……なぜ……。

米国の若者の頭の中は、

この『ホワイ(なぜ)?』で

いっぱいになっていた。

 『 反戦!!』

 全米の人間が、

ベトナムから米国が手を引く

『名誉ある撤退』を望んだ。

 が、望まなかったのは、

トップクラスの軍人と一部の政治家、

特に『L・B・J

(リンドン・B・ジョンソン。

第三十六代アメリカ大統領)』だった。

彼は、ケネディ暗殺以後、

心を入れて戦い始めていた。

 もともと、何の趣味もない彼は、

民主党の中で、

『何もやらない長老』という肩書きで、

余生を送るつもりだった。

 ところが、民主党大会で、

共和党に勝つためには、

ケネディがあまりにも若い

(当時ケネディは四十二歳)ために、

副大統領に長老の彼を座らせることで

平均化したのだ。

 ケネディが彼に言った。

 「L・B・Jさん、大丈夫ですよ。

私がすべてやりますから、

あなたはのんびりと四年間、

世界各国を私の代理で旅行されては……」

 この言葉を信じた彼が、

二年あまりで、

ケネディ大統領暗殺の当日の夕方、

飛行機の中で宣誓させられ、

核ボタン入り『ブラック・ボックス』を

手渡されたのだから、

たまったものではない。

 そのために、何のビジョンもない彼は、

ケネディのスタッフを

そのまま引き継いで、

ホワイトハウスに入った。

そして、そのスタッフの長ったらしい

各部門の説明を、

欠伸をしながら聞いていた。

 が、彼にとって、

まったく趣味がなかったわけではない。

 子供の頃から、戦争ごっこが大好きで、

近所の子供を引き連れて、

戦争ごっこを楽しんだものだ。

 第一次・第二次の実戦の戦争では、

実弾が怖かったために、

司令部詰めにしてもらっていたが、

それでも、かなり興奮して

毎日を送っていた。

 その彼が、欠伸まじりに聞く報告の中で、

身を乗り出して聞き入るのが、

南ベトナムでの

ベトコンとの戦火の報告であった。

 一週間後、

彼は、老いらくの恋とでも言おうか、

ホワイトハウス内に作戦本部を移し、

熱中しだしたのである。

 そして、彼は、

現地の『悲惨な状況』を見ることなく、

五年間、

この『ベトナム戦争』という

『恋』にのめり込んでいった。

 ところが、それまで、

アメリカ軍と南ベトナム軍は、

大量の新兵器で優位にたっていたのに、

今回の『テト攻勢』によって、

『大逆転』してしまった。

 L・B・Jは、苦々しい想いで

二月四日の作戦本部の報告を聞いた。

 そして、新聞を開くのに戸惑った。

なぜなら、各新聞が毎日のように、

あの忌々(いまいま)しい

反戦運動家達の叫び声を、

第一面に書き続けていたからだ。

 その叫び声とは、

このようなものだった。




 『おい、おい、L・B・J!

君は今日、

何人殺(や)ったんだい?』




 L・B・Jは、その日も、

恐る恐る『ニューヨークタイムズ』を

手に取り、第一面の活字を目に入れた。

 が、どこにもあの忌々しい活字は

なかった。

彼はほっとした。

 ところが、どこからか彼の耳には、

あの、


 『おい、おい、L・B・J!君は今日、

何人殺ったんだい?』


 が、聞こえてきた。

 彼は、自分の視覚と聴覚が逆転し、

狂ってしまったのかと思え、

血の気がなくなり、

あの赤ら顔が、真っ白になった。

 「俺は病気だ!

俺は病気だ!」

 と、叫びながら、

机のボタンを押し、

 「医者を呼んでくれ!」

 と、秘書に命じた。

 「俺は病気なんだ!

俺は病気なんだ!」

 彼はつぶやきながら、

新鮮な空気を吸おうとして、

後ろの窓を開けた。

 ところが、突然、

巨大なシュプレヒコールが爆発した。


 『おい、おい、L・B・J!

君は今日、

何人殺ったんだい?』


   彼は、愕然(がくぜん)とした。

ホワイトハウス前の「ザ・イリップス」、

そして「ワシントン記念塔」、 

右側の「リンカーン記念館」にかけて、

プラカードを持った数万人の人間が、

一斉に叫んでいるのだ。

 彼は、窓を思い切り閉じて、

ドッサリと椅子に座った。

そして、こう叫んだ。

 「俺は、負けんぞ!

俺は、負けんぞ!」

 しかし、この時のデモが、

単なる『反戦デモ』だけではなかった。

『公民権法』が絡んでいた。

 この法律は、

ケネディが暗殺される前年にサインして、

L・B・Jが受け継いでいた。

 だが、この法案は、

人間は、すべて平等であり、

白人・黒人・男性・女性すべて差別なく

『平等』が保障されたもので、

成立後、

八年になる。

 が、この民主主義国家アメリカは、

今だにこの「法案」の実施のメドがつかず、

もし、実施されているとすれば、

戦場に行きたがらない「白人」に代わって、

「白人以外の人」も

徴兵することになったことだ。

 ところが、そのために、

米兵の三分の二が白人以外の兵士

(アフリカ系黒人やイスパニック系や

アジア系等など)になり、

そのすべてがベトナムに送られていた。

そして、

「死」が彼らを待っていたのだ。

 ノーベル平和賞受賞の

黒人指導者

ヌーテン・ルーサー・キング・ジュニア

(キング牧師)を中心に、

この人種差別に対して

抗議運動が拡げられ、

この日のデモとなった。

 この数十万人の大行進の中に、

ワシントン大学の四回生で、

クリーム色の髪と眉、

グレーの瞳を持った

『ビル』がいた。

 ビルは、自分の進路で悩んでいた。

六月の卒業後、

必ず彼の手元に『召集令状』が来る。

そして、一と月も経たないうちに、

ベトナムで戦うことになる。

 南ベトナム駐留の五十五万人の

若きアメリカ兵は、

今年中に百万人に増員される予定が

発表されていた。

十八歳以上のアメリカの若者は、

すべてベトナム行きになる。

 『なんてことだ。三万人の死者と、

三万人の行方不明者を出しながら、

まだ懲(こ)りもせず、

若者を殺そうとするのか!』

 ビルは、喉元から声を漏らしていた。

 「死にたくない!

自分の夢は、

目前のホワイト・ハウスの主人に

なることだ。

今死んでたまるものか!

この戦争を終了させねば……。」

 ビルは、大声を張り上げて行進した。




「おい、おい、L・B・J!

君は今日は、

何人殺ったんだ?




おい、おい、L・B・J……。」

 しかし、その時、

ホワイト・ハウスの主人は、

医者に鎮痛剤をうってもらいながら、

州兵に命令を出していた。

 「外のデモを解散させろ!

放水車と催涙弾(さいりゅうだん)を

ぶち込め!

俺は負けんぞ!」





 この日の夕方、

ビルは、

目を真っ赤に腫(は)らして

学生寮にたどり着いた。

 三日間、水で荒い通したが、

目の腫れはおさまらなかった。





 三月。



 全米の新聞が、次の事件を報じた。



 『南ベトナムで、米兵が、

四百人のベトナム市民を、

大虐殺(だいぎゃくさつ)!!!

……ソンミ村で……。』



 残虐極まるこの事件は、

一将校が自分の部下に命じて、

一つの村の女性・子供・老人すべてに、

肉体的苦痛を伴う、

羞恥心をなくしたやり方で、

惨殺したのだ。

 この報道によって、

反戦運動と公民権法実施が一本化され、

学生や黒人等だけでなく、

一般市民がすべて立ち上がり、

全米の百の都市で

一億人の抗議デモが繰り広げられた。

 キング牧師は、

全米を回って、

国民に訴え続けた。




 「私には夢がある。

かつて奴隷だった人たちの子孫と、

かつて奴隷所有者だった子孫が、

ともに友情のテーブルを囲めたら、

という夢がある。

私には、肌の色や顔型や

国や南北などを乗り越えて、

みんな同じ人間として、

友情のテーブルを囲めたら、

という夢がある……。」





 四月四日。



 運命の日がやって来た。

 テネシー州の小さな町

メンフィスのモーテルで、

講演のために来ていた

『キング牧師』が、

白人のジェームズアート・レイによって、

『射殺』された。

 キング牧師は、

三十九歳という短命を終えた。

 このニュースによって、

全米の百三十の都市すべてで、

激しい暴動が起こり、

炎は、何日も燃え上がった。

反戦と人種差別の抗議暴動だった。





 ホワイト・ハウスは、

『沈黙』を守っていた。

が、上院議員の

『ロバート・F・ケネディ』

(暗殺されたケネディ大統領の弟)が、

時期大統領に立候補し、

『即時停戦』と

『公民権法完全施行』を唱え、

国民に平静を呼び掛けた。

 ビルは、ワシントン大学の自治会室で、

この演説を聴いた。

 来年の一月の大統領は、

このロバート・F・ケネディで

あることを願いながら、

友人達と表通りの燃え上がる住宅の

消火にあたった。

 燃えるにまかせていれば、

街中が戦火の後のように

朽ちてしまうかもしれない。

消防署も警察署も

ワシントン市内だけで、

百ヶ所近く火の手が

上がっていたために、

なす術がなかった。

 自衛ホースで消し、

負傷者を病院に運び、

交通整理にあたった。

 一部の黒人・イスパニック等が

反戦ではなく、

略奪を目的として暴れ回っているので、

ビルは、顔に墨を塗って

鎮火活動に従事した。

 ビルは、行動しながら、

あることに悩んでいた。

炎の中を走り回りながら、考えた。



 『徴兵か、

それとも、

逃亡か』



 事実、

何万の学生や若者が、

召集令状をライターで燃やし、

海外旅行を装って、

南米やアジア・ヨーロッパ、

そしてカナダに脱出した。

 しかし、彼らは

アメリカに帰って来たならば、

犯罪者として逮捕される。

 ビルは、悩み続けた。



 『人生の岐路(きろ)』



 アメリカ人の男性である証明の

『徴兵』。

そして

『すべての道は、ベトナムに』。

それとも、

『逃亡』。

そして

『すべての道は、監獄に』。

 夕焼け空を背にして、

美しく飾られた庭の白い建物。

そのホワイト・ハウスの前に

たたずんだビルは、

彼の夢が砂の城のように

崩れるのを感じた。

 その時、ビルの後ろから、

彼を呼ぶ声を聞いた。

その声は、

年老いたビルの指導教官である

『ダン教授』だった。

 教授の顔も

ビルと同じ墨が塗られていることから、

ビルと同じ活動を

していたことが分かった。

 「アメリカは、『病んでいる』。

愛しているが故に悲しい。

これからアメリカを

背負って立つ若者が、

ベトナムに行き、

麻薬と酒と殺人に溺れている。

国内では、暗殺と暴動……。

『この病気』は、

治るまでに四分の一世紀、

25年以上必要だろう。

君のような若者が、

このホワイト・ハウスの

主人になるまでは……。」





 老教授は、

その日、ビルを郊外の自宅に誘って、

夜遅くまで自分の意見を語り続けた。

そして朝方、

教授がビルに言った。

 「君は、

『オックスフオード大学』の

『ローズ財団』の

『留学試験』を受けなさい。

私が、推薦書を書こう。」

 「……。」

 「二年間、国外におれる。

間違っても、一年間、

召集令状はこないだろう。

その一年間で、

世界を見て来なさい。

自分の国を外から見るんだ。

そして、

新しい自分の国を創造するのだ。

二十五年後のアメリカは、

君が背負ってほしい。」





 五月。



 ビルは、『受験勉強』に入った。

一日二十時間を勉強に当て、

ほとんどを国立国会図書館で過ごした。

 ホワイト・ハウスの主人

「L・B・J」は、

毎日鎮痛剤を打ち、

テレビ番組で、

 『次期大統領選の不出馬』

 を表明していた。

若き勇者「ロバート・F・ケネディ」に

勝てるはずはなかったからだ。

 しかし、ベトナム戦争は、

北爆を中心に続けさせていた。





 六月五日。



 またも、

全米のテレビ・ラジオ・新聞が

トップニュースで、

『病めるアメリカ』の事件を報じた。



 『ロバート・F・ケネディ

次期民主党大統領候補、

ロスのホテルで『射殺』さる!!』





 その日、ワシントンの

市井(しせい)では、

悲しみのあまり

『聖者の行進』の曲が鳴り響いた。

 ビルもこの日だけ、

勉強をおいて

トロンボーンを吹き続けて、

悲しみを癒(いや)した。

病めるアメリカから脱出するための

第一次試験は、

全米でかつてない競争率であったが、

ビルは、「三次の面接」までこぎ着けた。





 場所は、ニューオリンズ。



 が、全米からえり抜きの秀才たち十名が、

集まって来る。

二万人の中の十人だが、

『オックスフォード大学

ローズ財団留学生』の店員は、

『三名』だ。

 しかも、第三次の最終試験は、

『口頭試問』で

十数名のオックスフォード大学の

教授たちが、

あらゆる一般常識から専門分野まで、

矢継ぎ早に質問してくる。



 このローズ留学生に選ばれた学生は、

二年間の留学だけでなく、

未来が嘱望(しょくぼう)されていた。




 前日、

母親に最終試験まで残っていることを

電話で報告した後、

彼は、眠れずにいた。

 頭の中で、

専攻の政治学から、経済・文化・歴史・

文学・英米の法律・民族・天文・スポーツ、

あらゆる分野の文字と数字が

通り過ぎていった。

 眠れずのままで

六時にベットから起きて、

空港行きのバス停まで歩き出した。

 が、雨が降ってきた。

 寮まで傘を取りに帰ろうか、

と思ったが、小走りに走り、

朝刊販売店に飛び込んで、

一ドルの『タイムズ』誌を買って、

傘替わり、頭に被(かぶ)った。

 一張羅(いっちょうら)のスーツを

気にしながら、走った。

 看護婦をしている母から、

卒業式に着ていくために

贈られたスーツだ。

 『妹弟たちを育てるのに精一杯で、

金銭的に何もしてやれない。』

という『詫(わ)びの手紙』が、

ポケットに入っていたスーツだ。

 考えれば、高校・大学と、

彼は奨学金とアルバイトで

生活していた。

母親の苦労が

十二分に分かっていた。

 雨が激しくなってきたが、

かろうじてバスに飛び乗った。

 『タイムズ』誌の水を叩いた。

 手術に関係した写真と記事で、



『スタッフォード大学・

サムウェイ教授の、

・・【プランテイション】・・

世界の【心臓移植】の全貌』



 と書かれてあった。

 ビルの妹が、

『心臓弁膜に異常』があったので、

興味を持って読み始めた。




『…… …… 今後十年すれば、……

『不治の病』とされた『心臓』

に関する病気は、

すべて解消され、

『心臓ペースメーカーが不必要』となり、

生命は維持されるだろう。……』





 サムウェイ教授の言葉が

引用されて、

記事は数ページに渡って掲載され、



 『その方法と特徴と

今後の研究課題と問題点』

 が、書かれてあった。

 ビルは、ワシントン空港前で

飛行機に乗り換え、

ニューオリンズまで三時間を、

その『タイムズ』誌に没頭した。

 鞄の中には

口頭試問のための専門書を

何種類か入れていたが、

『妹』のことを、

この『患者』に置き換えて読みふけった。

サムウェイ教授の研究が、

さらに進めば、

妹の命は助かるかもしれない、

と考えた。

ニューオーリンズ空港から

タクシーに乗り、

リー将軍記念碑を回り、

 セント・チャールズ通りから

ロイヤル通り、そして

シュッピング街のバーボン通りの

『マリーアントワネットホテル』に

着いたのが、十一時過ぎだった。

十一時三十分、

八階の八〇五号室が、

会場に指定されていた。

 トイレで身支度を整え、

ロビーで指定時間の五分前まで、

残りの記事を読み続けた。

 最後の記事は、

今後の問題点が書かれていた。





『 ……技術的には、ドナー(提供者)と

レシビエント(受容者)の選択基準、

及び免疫適合性検査と

拒絶反応に対する対処は可能だが、

『摘出後の保存時間』が

『六時間』であることの難点を、

どのように解消するかである。……』





 ビルは、そこまで読んで、

柱の時計を見て立ち上がった。

 エレベーターに乗り、

気分を変えるために、

指導教官の言葉を、繰り返した。



 『where there is a will

(意志あるところに道は開ける)!』



 八〇五号室。

 二分前にノックすると、

中から声があり、

ドアーを開けた。

 中から十数名の男女が、

彼を迎え入れ、

握手をかわして椅子に座った。

 イギリス英語と

はっきり分かる話し方で、

ワシントン大学の専攻の政治学と

オックスフォード大学に

入った時の研究課題の質問の後、

ビルと同じクリーム色の

髪の女性が言った。

 「『プランテイション』について、

知っていることを話してください。」

 「プランテイション?」

ビルの繰り返しに、

クリーム色の女性が

ゆっくりしたイギリス英語で続けた。

「ええ、

『PLANTATION』です。」

 ビルは、びっくりした。

まさか、

今さっきまで読んでいた

「プランテイション」の話が、

この口頭試問で尋ねられるとは……。

 彼は、自分と同じ

クリーム色の眉の女性を見詰めて、

取って置きの情報を話し出した。

 「『プランテイショウ』とは、

『ハート・トランスプラント

(心臓移植)』のことで、

スタッフォード大学の

サムウェイ教授と

そのグループによって、

世界で初めて成功しました。

その方法を話しますと……。」

 彼は、淡々と話し始めた。

妹の心臓を考えながら

読んだ記事は、

泉のように湧(わ)き出てきた。

 「……今回のドナーは、

交通事故によって

手術『五時間』前に

『脳死』と判定されています。

『六時間』という短い制約での移植です。

この六時間しか内臓を保存できない点が

問題点になります。」

 ビルは、少し間をおいて言った。

 「それ以外に、

他にも問題点が考えられます。

それを述べてもいいでしょうか?」

 「ええ、どうぞ、話してください。」

 「その問題点以外にも、

難しい問題が絡んでいます。」

ビルは、以前から考えていたことを、

話しだした。





「 ……従来の『生命の死』は、

『心臓の停止』によって

判断されていましたが、

『心臓移植』の大前提では、

『脳死は生命の死』であるという

考え方であります。

我々米国及び西欧においては、

人間は、『デカルト』のいう

『コギト・エルゴ・スム』における

二元論によってなりたっており、

特に『思惟(しい)』がなくなれば、

それは、『人間』ではなく、

『機械』と同じものと判断されます。

この点から出発した時、

初めて『心臓移植』が可能であります。

……まだ続けてよいでしょうか?」





 クリーム色の女性は、

笑顔でうなずいた。





「 ……が、しかし、

東洋的な精神論の考え方から出発し、

人間は『肉体』以外に

『魂』が存在し、

『肉体』が滅んでも

『魂』が生き続ける、

あるいは、『精神』も『肉体』も

『あの世』で

生き続ける、

すなわち、

『東方思想』や『仏教』の考え方である

『認識論』と『存在論』が

一つのものであり、

哲学・神学・心理学なども一つのもの、

と考えた時、

東洋では今後、

五十年以上後でも、

『心臓移植は認められない』

と思われます。

いや、もっと……」





 クリームの女性は、

口をはさんだ。

 「その場合は、

どのようにすればよいでしょう……」





 「……はい、難しい問題です。

どのように『説得』するか、ですが、

『不可能』かもしれません。

 ……ただし、ただし私は、

『プラグマチズム』(実用主義・ 自然科学的方法)の考え方で、

『説得』とまでは言えないでしょうが、

『納得』してもらえると思います。

『移植された人』が

生存することを重視した時、

この手術は必要であった、

ということです。

 『ワンロストヒズライフ 

バッアットセムタイム 

アナザアズスバィド!』・・・」





 [ジャスト・モーメント、

プリーズ!!……]



 突然、

クリーム色の女性が、

眉を顰(ひそ)めて、

口を挟んで言った。。

 「ワット?パードン?」





 ビルは、「しまった!」と思った。

思い上がり過ぎて、

喋り続けてしまった、

と『後悔』しかけた。



 が、女性が直ぐに、

次の言葉を言った。

 「ワンスモアー、

スロー・スロー・プリーズ。」

 ビルは、その言葉を聞いて

ほっと、した。

内容のことではなく、

下町の早口な

訛(なま)りのある

『アメリカ英語』

のことだった、

と安堵(あんど)しながら、

ゆっくりイギリス英語で話した。





 『 One lost his life ,

but at the same time

anather has survived .

(一つの生命が喪失〈そうしつ〉したが、

一つの生命が生き伸びた。)』





 女性が、また笑顔にもどって言った。

 「アンダースタンド!」

 ビルは、話しを変えて言った。



 「……私は、もう一つ、

『心臓移植』を成功させた医師団に、

『厚い敬意』をはらいたいと思います。

 ドナーの心臓は、

保存時間が『六時間』しか

ありません。が、

その短時間において、

『免疫適合性検査』を行い、かつ

『摘出し移植する』。

もし、拒絶反応が起これば、

手術は失敗です。……

 ……『細心の注意と集中力』と

『高度の技術と知識』を、

『六時間継続』して、

初めてなしえるのです。……

 ……世界中の人口の

五分の一の人々が、

何らかの形で心臓に

『欠陥』を有している現在、

この手術の成功は、

素晴らしい朗報と言えます。……





 ……もう一度、

『医師団に熱く、そして、

厚い敬意を申し上げたい』と思います。」





 四・五十分の口頭試問で、

この話題がほとんどの時間をしめ、

ビルとクリーム色の眉の女性の

やり取りで終わった。





 ビルは、ワシントンに帰る前に、

通り一つ先の

『プレイザベイション・ホール』で、

本場の『ジャズ』を聴いた。

身体中からほとばしるそのリズムは、

この一ヶ月間の

猛勉強の疲れを癒(いや)した。





一方、クリーム色の女性は、

ビルの諮問の後、

他の教授に、

このような事を話していた。

 「彼は、私と同じように、

今朝の『タイムズ』誌を読んでいたわ。

……この新聞……。

この新聞の内容と同じ事を

彼が話しただけ…………

しかし、……。」

 女性教授は、続けて言った。

 「しかし、彼の記憶力は、

抜群です。

朝、手に入れた新聞の

数ページに及ぶ記事を

丸々暗記していたのです。

たとえ、先に口頭試問の『質問内容』を、

教えられていたとしても、

あそこまで暗記し答えられないでしょう。

しかも…………。」

 クリーム色の眉の中の水色の瞳を、

大きく開けて、

彼女は言った。

 「しかも、『読解力と思考力』を

持っています。

彼が後半に話した……

『デカルトの二元論』や

『東洋的精神論』の『魂』や

『東方思想』等の話は、

彼の勉強の賜物(たまもの)です。

……しかも……。」

 今度は水色の瞳を、潤ませて言った。

 「……彼は、人間的に、

素晴らしい人物です。

なぜなら、

最後に述べていました、

医師団に対する苦労の

『ねぎらい』の言葉です。」



『……もう一度、医師団に熱く、そして、

厚い敬意を申し上げたいと思います。……』



 「医師団の方々がこの言葉を

お聞きになられたなら、

さぞ、お喜びになられることでしょう。」

 青い瞳の教授は、

白いハンカチを出し、

思い切り大きなトランペットのような

音を出して、

両側の鼻をかんでから言った。

 「余談ですが、

私の夫は、この医師団のメンバーです。」

 そう言って、

顔をクチャクチャにして、座った。

 十数人の教授は、

彼女と、彼女の主人が含まれる医者達に、

大きな拍手を送った。





 二日後。



 ビルは、大学卒業式の日に、

指導教官の『ダン教授』から、

『ローズ財団』の

『合格証』を受け取り、

彼の銀行口座に一年間の留学費用、

『九千ポンド』が

振り込まれていることを、

教えられた。

 彼には途方もない金額で、

約二万五千ドル(日本円で九百万円……

一ドル三六〇円)。

ホワイトカラーの

上級の給料に匹敵した。

 教授は、ビルに言った。

 「世界は広いぞ。

いろんな国を見て来なさい。

すべてが君の肥やしとなる。

ただし、

 『驕(おご)り高ぶることなかれ!!』

 それは、人間の目を曇らせる。

 世界には、いろいろな国があり、

民族がいる。

それぞれの民族を、

少しでもいいから見てくるのだ。……。

 ……まず、『顔を見よ』。

民族の違いが分かるようになれ!

次に、『心を見よ』!

表面だけでは、心は分からぬ。

君の『心を見せよ』!」





 七月。



ビルは、留学費用の

十パーセントを、

母親の銀行口座に振り込んだ。

そして、

十パーセントを、

「店頭株(後に「ジャスダック」)」の

小さな会社の「株」を買った。

それは、手術を成功させた

「サムウェー教授」のスタッフへの、

これからの援助の気持ちだった。





 そして、ロンドンに旅だった。





 それから、数ヶ月後の冬休みに、

『アッシュ(大麻の原種)』の

誘惑のため、

モスクワに来た。

が、『アッシュ』所持のために

逮捕され、

一年の刑で

『ラーゲル(収容所)』の中に

送り込まれたのであった。





       『第八章  『 追 跡 (ついせき)』に続く。




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第一章   白夜のささやき

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第二章   カットグラスの輝き

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第三章   裁き

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第四章   轟(とどろ)き・・・

(ダニーの話)

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第五章   ラーゲルの吹雪(ふぶき)

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第六章   殺人の痕跡・・・

(ドクター荻野の話)

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第七章   「アッシュ」の手引き・・・

(ビルの話)

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第八章   偽装の閃(ひらめ)き

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