トップページ



「小説」の見出しページ





パープル・サンフラワー(小説)

マルタン丸山



第十二章 『ハッカ(旅する人)の

呟(つぶや)き』

 



 <これまでのあらすじ>



一九六八年八月、

日本人大学院生『栗須(くりす)』は

学生紛争で

機動隊に閉鎖された学舎を後に、

横浜からソ連船に乗り、

ソ連(旧ソビエト連邦)のモスクワから

北欧を通って

ヨーロッパに行こうとしたが、

ふとしたことから

チェコ・スロバキアの改革

(プラハの春)に対する

「ワルシャワ条約機構」の

武力介入に巻き込まれ

「KGB(ソビエト秘密警察)」に

逮捕された後

「シベリア収容所」送りとなった。

 フランス人で「パリ革命」首謀の

赤毛の『ダニー』のもと、

二十五人の

「外人部隊」と呼ばれる連中と

助け合いながら月日を過ごし、

冬将軍が飛来するころ、

強烈な腹痛と高熱で

病院に収容される。

 その病院の元日本兵で病院長

『ドクター荻野(おぎの)』に

一命を助けられ、

その娘の光子の協力で

脱走に成功し、

収容所のダニー以下

数名をも脱出させたが、

それを引き金に

ソ連と中国は武力衝突を起こし、

六人の国境侵犯者

(日本人の『栗須』・

フランス人の『ダニー』・

アメリカ人の『ビル』・

日系ロシア人の『光子』・

その他二名)は、

激しい砲弾の中を

中国側に走り続けた。

 が、中国は、

『文化大革命』の真っ最中で、

下放(地方の農村での強制労働)

させられた

元『紅衛兵リー・ズンシィン』に、

数千万人を飢死させ見殺しにした

『マオツオトン(毛沢東)』の

残虐な独裁政治の話を聞いた後、

解放軍に拘束されたまま栗須・

ダニー・ビルの三人だけが

北京の特別区に連行され、

マオ主席に謁見(えっけん)する。

 マオ主席は、栗須に関係する

すべてがKGBの仕業である事を

述べるとともに、

マオ主席自身が

「友人」の『革命児チェ・ゲバラ』

(西側筋のCIAでは

処刑されたと発表されていた)の

消息と救出を条件に

光子の身柄を保証すると約束した。  





1、  一九六九年 ハイジャック




三人は、思いのほか上機嫌で

マオの屋敷をリムジンカーに乗って出て、

その日はそのまま

「中南海」の中にある

豪華な邸宅で過ごした。

清国時代からある高級住宅である。

   外は凍てついていたが、

彼らの体は燃えていた。



 二日後。



 例のマオ特製の

ポーリーティー(普茶)を飲んだあと、

車は「中南海」から

「紫禁城」そして

「午門」「天安門」を抜けて、

天安門広場に出た。

マオツオトン主席の巨大な肖像が、

彼らに微笑んだ。

 その前の大きな道路を

スピードをあげて左に走り出す。

 何ヵ所かで、

人間を獣のように綱で縛りあげ

蹴りあげ引きずり回す、

例の卑劣な「糾弾」行進が

うごめいていた。

 だが、三人は数日前までの

憎悪も怒りも一切感じず、

ただリムジンの

柔らかいソファーに身を沈め、

心地良い血流を感じていた。

あのポーリーティー(普茶)が

血の中で循環していたからかもしれない。

その内に眠気が三人を襲った。

 車は「建国門」でまた左におれ

「東直門」で右におれ

「東直門外科街」に入って

「北京国際空港」に向かった。

解放軍兵士が三人を

揺り起こしたのは、

空港のロビー入口だった。



 が、

目の前に国民服を着た女性が

二人いた。

一人はマオ主席の部屋にいた

マオの五人目の妻『マウキンウン』で、

もう一人は『光子』だった。

 栗須(くりす)と光子は、

抱き合って再会を喜びあった。

 マウキンウンが

マルカイックスマイル

(神秘的な微笑み)を

浮かべて言った。

「光子さんは、

間違いなくわたしがお世話します。」

 光子は栗須の胸の中で言った。

「この中国で、

一生懸命生きていきます。」

「光子さん、我々とマオ主席との、

『約束』を聞いていますか?」

 栗須の言葉に、

光子は胸の中でうなずいた。

栗須は続けた。

「私の使命は必ず遂げ、

連絡します。

必ずこの中国に帰ってきます。

その時まで

身体に気を付けていてください。」

栗須の言葉を継いで、ダニーが言った。

「必ずオレ達は、やり遂げる。

あんたは、オレ達の命の恩人だ。

気を大きく持っていてくれ。」

「中国とアメリカが

国交を回復したときには、

あなたに真っ先に会いに来る。」

 ビルが言葉を続けていた。

 その後、マウキンウンが、

彼らに封筒を手渡して言った。

「マオ様から、お手紙を預かっております。

もし、何かがあった時には、

『役に立つ』と

仰(おしゃ)っておられました。」



その時、解放軍兵士の指示で、

全員はロビーの中に入った。



広いロビーの中の

壁いっぱいに書かれた、

あの右さがりのマオ主席の

文字の前の階段を上ぼり、

別室に案内された。

解放軍兵士は、

アタッシュケースから

「パスポート」を取り出し、

三人に手渡した。

紺色の「パスポート」を

受け取った栗須は、

自分の写真が貼られた

新品のそのパスポートを

しげしげと見つめた。

 解放軍兵士が英語で言った。

「我々の仲間には、

指先の器用な者が何人もいます。

本物そっくりです。

いや、本物と言ってもいいでしょう。

あなた方の役人がつくったものより、

より丁寧に出来ています。」

 彼は、その自信を、

顔に出して続けた。

 「……さて、あなた方は

これから飛行機で

『コワンチョン(広州)』に

二時間で行き、

そこから車で十五分の

『香港』に入ります。

そしてこの「写真の人物」と

会っていただきます。

連絡係りです。

裏に名前と電話番号を

書いておきましたが、

彼があなた方を捜して

寄ってきます。

そして、

それ以後のことを指示しますので、

彼の言葉に従ってください。

では……。」





三人は、

光子とマウキンウンに

最後の別れをつげ、

奥のドアーから

もう一つの貴賓室を抜け、

階段を降りた。

重い扉が開かれると、

巨大な飛行機が

何機も彼らを待っていた。

 が、皮肉なことに、

その中の

ソ連制『IL(イリューシン)62』の

コールナンバーの飛行機が、

彼らを「自由の世界」に案内する。

 彼らの頭に、

ソビエトでの

辛くて苦い思い出がよぎる。

タラップをのぼりながら、

 ダニーが言った。

「これでまたソ連に連れ戻されたら、

オレ達は終わりだな。」



   中には、『紅衛兵』の腕章を巻いた、

緑の軍人達が、ぎっしりと

埋まっていた。

 カーキー色の国民服を着た

スチワーデスに、

前方のファーストクラスの席まで

笑顔で案内される。



 シートベルトを締めるように

指示された三人は、

ゆったりしたソファーに沈み込んだ。

 スチワーデスの

北京語と広東語のスピーチが

マイクから響いた後、

機長の重いがやや『緊張』した北京語が、

出発を告げる。





この『IL62』の機長と副機長は、

それぞれの想いで

『緊張』していた。

 機長にとって、

実は、この日が

「最後のフライト」だった。

彼は今日六十五歳の誕生日で、

しかも明日からは『恩給生活』に入る。

その「記念すべきフライト」だ。

 副機長は副機長で、

今日が副機長としての

「最後のフライト」だ。

隣の席の機長の後釜が

保証されていたが、

万が一

このフライトにミスでもあれば

すべては消え去る。

しかもその重要なフライトで、

二人に手渡されたものは、

「マオ主席の直筆のサイン」の入った、

「外国人三人を搭乗させる」指示書だった。

マオ主席は彼らにとって雲の上の人、

いや神であって、

ただただ

「畏敬(いけい)の念」のみが先にたち、

信じられるものではなかった。

機長は自分に言い聞かせた。

「わしのこの華々しい人生にとって、

記念すべきものであり、

しかも『マオ主席』が、

わしの操縦を見込んでのことだ。

ありがたい………、

ありがたい………。」

副機長も

自分に言い聞かせていた。

「わしの操縦技術をみるために、

マオ主席じきじきの

監査官を派遣したのだ。

コワバラ、

コワバラ。」

その時、管制塔から中国語で、

コールナンバーを呼び出された。

「登録番号『IL62・3231』、

滑走路12番に寄れ。

退去せよ。」

 二度繰り返されたあと、

機長はスイッチを入れて

了解したことを伝えた。

頭の中では

離陸時間が過ぎていたために

疑問は残ったが、

管制官は

絶対的権限を持っており、

指示に従って

操縦室のエンジンレバーを

前に押した。

ゆっくり機首を滑走路わきの

12番の待機場所に向け

飛行機をころがせた。

 機長は機内マイクのスイッチを入れ、

北京語で放送した。

「お客様にお詫び申し上げます。

車輪点検の為、

離陸時刻が遅れます。

御了承下さい。」

 いつもより丁寧な口調であることが、

副機長には分かった。





ダニーが英語でつぶやいた。

「遅れるらしい。……」

 ビルも栗須もその時、

目を閉じていた。

長く辛い生活から、

いよいよ抜け出し

飛び立つ時が来たのを、

エンジン音と車輪の揺れで、

心に感じていたのだ。

 ダニーの言葉が

合図だったかのように、

二人は眠りについた。

ダニーもまた二人の後を追った。





五分後。



 黄色の星を赤で縁取った

マークの入った解放軍数機が、

ソ連のカマのマークの入った

国旗のついたミグ機を、

誘導して滑走路に着陸した。

数十台の装甲車とトラックと消防車が、

ミグ機の回りを囲んだ。

そして収納庫に引っ張られていく。

「どういうことだ。」

 『IL62』の機長が、

不機嫌に言った。

「亡命か国境侵犯でしょう。」

 副機長が、知ったかぶりに答えた。

「コワバラ、コワバラ、

我々が飛び立った時なら、

ひょっとして

打ち落とされていたかもしれん……。」





五分後、

管制塔から

滑走路に戻るように

命令された『IL62』は、

先ほどの進行方向に

戻りだした。

機長は、客室用のスイッチをいれ、

離陸できることを告げた。

ダニーは、

うめくような半分寝た声で、

英語で言った。


「離陸するらしい。」

 他の二人は眠っていた。

『IL62』の機長は、

滑走路の真ん中に出て、

三十五年間鍛え上げた腕で、

エンジンレバーを

前方に押していった。

『IL62』は、

ゆっくりそして確実に走りだした。

管制官から連絡がきた。

「風330度、速度3ノット、

離陸許可する。」

「確認、了解」

「甲1」

「了解」

 エンジンレバーがより前方に押され、

『IL62』は全速力で走る。

「乙2」

「了解」

 機長はエンジンレバーを手前に引く。

『IL62』は

鮮やかに揺れ一つなく

舞い上がった。

副機長が機長の腕の良さを誉める。

 高度はぐんぐん上がり、

五分後

禁煙ボタンを戻す。

また五分後には、

シートベルトのボタンも戻した。




十分後。

 客室のスチワーデスは、

ファーストクラスの客に配る

おしぼりをテーブルの上に置き、

次の食事の用意のために、

中央のカウンターに入った。

今日は、機長らと同じく、

少し『緊張』していた。

やはり、「マオ主席の客人」が

ファーストクラスに

乗っていたからだ。

 



 ところが、そのためか、

後部から

「二人の男」が

前方に歩いて来たのに、

気付かなかった。

ファーストクラスの三人が

ぐっすり眠っている間を通りながら、

二人の男は覆面をかぶった。

 一番前のパーサーが

気付いたときには、

ポケットから

「ジャックナイフ」を取り出した

一人の男が、

パーサーの喉元に突き付けた。

刃わたり十五センチはある

登山用のやつだった。

「操縦室を開けろ!」

 パウサーは驚きのあまりに、

棒立ちになっていた。

男は顔を近付け、

覆面の中からドスのある声で

もう一度繰り返した。

パーサーは、

こわごわ男の目をみた。

覆面の中に

「ぎょろ目」だけが異様に光っていた。

 しかし、パーサーは、

首を横に振った。

男はナイフの柄で

パーサーのこめかみに

一撃をくらわした。

うめき声と共に血が一筋流れ、

パーサーは脅えながら、

すぐに操縦室のドアーの開閉ボタンを押した。



操縦室では、その時、

機長と副機長が

たわいない話をしていた。

定年後には毎日釣りを楽しむとか、

孫がどうとかだが、

まさか背中の扉でパウサーが

血を流しているなど

気付きはしなかった。

 機長はいつものように

ドアーランプがついたので、

開閉ボタンを押した。

その瞬間パウサーが

頭からつんのめって転げ込んで来て、

ろれつの回らない口で

機長の名を呼び、

そのまま倒れた。

 二人の男は機長と副機長の首に

ナイフを付けた。

「今、どこを飛んでいる?」

 「ぎょろ目の男」が、

ドスをきかせて機長に言った。

機長は距離盤を見た。

約五百キロ飛んでいる。

前方を見ると広くて長い川が見える。

機長は平静を装って言った。

「もうすぐ『黄河』だ。」

「目的地までどれぐらい飛ぶ?」

「二千キロ!」

「目的地を変えてほしい。」

「どこへ。」

「デリー!」

「インドのデリー?」

「そう。」

「ムリだ。燃料がもたない。

ハノイなら飛べる。」

「ハノイはだめだ。

中国と手を組んでいるし、

米国と戦争している。

バンコクかプノンペンはどうだ。」

「分からない。もつかどうか。」

「北京から広州まで二千キロ、

万が一の為に

燃料は倍積んでいるとして、

北京から四千キロにバンコクか

プノンペンがある。」

「それは直線で飛んでのことだ。

戦争中のベトナムを

通り抜けるわけにはいかないから、

四千五百にはなる。

燃料はもたない。」

「じゃ、ビルマのランクーンなら、

四千キロでベトナムの上を

飛ばずに行ける。

ランクーンにやってくれ。」

「むりだ。

あそこは鎖国状態だ……。」

「かまわん!」

「むりだ。

それに解放軍機にやられる。」

「しかたない。

どうせ死ぬ覚悟はできて……。」



 その時、



副機長がそっと左手を、

脇の方のボタンに伸ばしかけた。

「ぎょろ目の男」は、

副機長の後頭部に

ナイフの柄を打ち付けた。

副機長は鼻を

前方の計器に思い切りぶつけた。

鼻血が飛び出した。

「変な事をしたら

取り返しがつかなくなるぞ!」

 ぎょろ目の男が言って、

機長にまたナイフを突き付けた。

「ランクーンまで

飛んでくれれば何もしない。」



その時、後方から

ノックの音と共にスチワーデスが、

パーサーを呼ぶ声がした。

パーサーは床でまだ気絶していた。

機長はすぐに答えた。

「パウサーと打ち合わせしている。

すべて、予定通りやってくれたまえ。」

ドアーの外のスチワーデスは、

ちょっと躊躇(ちゅうちょ)したが、

すぐにいつもの通り、

飲み物を客に配りだした。





「今、どこを飛んでるの?」

 ダニーが

女の子にちょっかいをかける調子で、

スチワーデスに声をかけた。

スチワーデスは時計を見て言った。

「今、黄河あたりです。」

 なるほど外を見ると、

蛇行した大きな河が見えた。

「ねえ、チャンさん……。」

 ダニーは、

彼女の胸の名前を見て言った。

「……ポーリーティー(普茶)は、

ある?」

「ポーリーティーですって?

……申し訳ありません。

当機には置いておりません。

ウーロンティーと緑茶なら……」

「どうしてポーリーティーを

置かないの?」

「高価な物ですから……」

「高価?」

 ビルがダニーの方を見たので、

説明した。

「それは残念だ。

飲みたかった……。」

 ビルが言い終わる前に、

スチワーデスが言った。

「それに、あのティーは、

販売されておりません。」

「えっ?販売されてないって、

どういうこと?」

「清国時代と国民党時代には、

一般に販売されておりましたが、

解放後は、

『禁止』になりました。」

「どうして?」

「アヘンと同じく、

『麻薬』だと言われています。」

 ダニーは驚きながら、

ビルと栗須に英語で説明した。

二人もびっくりして顔を見合わせた。



 『マオ主席はそれを

毎日飲んでいる!』



 三人の頭の中に

その言葉が浮かんだ。

三人はスチワーデスに礼を言って、

ウーロンティーを口に入れた。

その味はポーリーティーとは

比べ物にならないほどの

まずさだった。

「さっきの眠りは、

ポーリーティーが

効いているためかもしれん。」

 ダニーがつぶやいた。

 栗須が立ち上がって

トイレに行こうとした時、

シートベルト着用のランプがついた。



 その瞬間、



飛行機は一気に

数百フィート降下した。

シートベルトをしていない三人は、

座席から飛び上がり

三半規官をやられ、

吐き気を催した。

後方の緑の軍団の方でも、

かなりの叫び声が起こっていた。

スチワーデスは通路に倒れかかり、

辛うじて、

ダニーが抱きしめて難を逃れた。




この急降下は、

その時、

操縦室で

定年間際の老機長が、

緊張のあまりに、

突然目まいを起こし、

意識を失って

うめいていたのだ。

 二人の覆面の男は、

急降下によって

床に腰を打ち付けていたが、

なんとか起き上がり

椅子にしがみついていた。

鼻から血を流している副機長が、

エンジンレバーを

ようやく

自分のハンドルに切り替え、

飛行機を安定させた。

しかし、

副機長は

激しく身体を痙攣(けいれん)させながら

言った。

「機長の、様態を、

診てやって、……ください。」

 ぎょろ目の男が、

椅子にしがみついたまま言った。

「オレ達は、医者じゃない。」

 それを聞いた副機長は、

エンジンレバーから手を離し、

隣の機長席に

両手を差し伸べようとした。

そのとたん、

自動操縦に切り替えていない飛行機は、

またも急降下した。

「やめろ!手を離すな!」

 ぎょろ目が叫ぶ。

「私は、私は、まだ一人で、

操縦したことが、ないんです。」

「なんだって!?」

 ぎょろ目は、副機長の腕を

ハンドルに持たせながら言った。

「どういうことだ!?」

 副機長は、鼻血と涙を流しながら、

小間切れに言った。

「私は、

……機長の命令通りに、

スイッチを、

いれるだけで、

全てを任されたことが、

ないんです。

……それに、

国内しか、

飛んだことがない。

……それに、

国外に行くなら、

英語が必要だが、

私の受けた訓練は、

外国語が禁止だったので、

英語は、

一切できない。

……それに、

『航路』を知らない。

それに……。」



「なんてことだ!まいった!……」

「……どうしょう?……」

 眉毛の太い、もう一人の男が、

初めて喋った。

「……客の中から医者を捜して、

来させようか。」

「そうだな、やばい感じもするが、

それしかない。

……副機長、マイクで医者を捜し、

ここに呼んでくれ。」

 副機長は、

ハンカチで涙と鼻血を拭いて、

スチワーデス用の

マイクスイッチを入れた。

   副機長の顔は、

さっきよりも

醜い形相(ぎょうそう)になって、

辛うじてしどろもどろに話しだした。

「ああ、チャン君、

副機長だが、

お客様の中の医者に、

操縦室に、来てもらう、

放送を入れるから、

機内を回ってくれないか。」

 スチワーデスのチャンは、

二度の急降下で、

がたがたになった身体を伸ばし、

一言、返事だけして

受話器を置いた。

そして、

シートベルトを外し始めた。

が、

こんな酷い飛行は初めてだったし、

飛行機酔いもしていたので、

副機長を恨んだ。

「お客様に、申し上げます。

ただいま、急病人が、

でましたので、

誠に、恐れ入りますが、

ご乗客の皆様の中に、

お医者さまが、

いらっしゃいましたら、

スチワーデスに、

ご連絡くださいませ。」





スチワーデスは、

三人のいるファーストクラスを通り、

緑の軍人と国民服で詰まった

客席を歩いた。

その時、

二つの席が

開いたままになっていたが、

気にせずに

医者からの合図を見て回った。

 誰からも合図はない。

彼らの全員が、

二度の急降下によって、

自分たちが

医者に診てもらいたいほどの

真っ青な顔をしていた。

彼女にしてもそうだったし、

他のスチワーデスも

ぐったりしていた。

 一周して自分の席へもどって

受話器をとり、

誰もいないことを告げた。

「……そうか、一人もいないか……。」

 副機長は肩を落とし、

鼻血だらけの顔で

ぎょろ目の男を見た。

ぎょろ目の男は

相棒の太い眉毛の男に言った。

「君は、英語で管制官と話せるか?」

「ああ、少しならできる。

しかし、自信はない。

ぼくより、

客の中の

『赤毛の外国人』の方が

適任者だ。

彼を呼ぼう。」

「『赤毛の外国人』?

フアーストクラスの?

しかし、

彼が英語を話せるとは、

きまってないぜ!」

「彼のことは、

少し知っている。

彼とは、

英語で話したことがある。」

「えっ、いつ?……まあいい。

英語が出来るなら、

都合がいいが……。

副機長、

今の話の通りだ。

ファーストクラスの外国人を

呼んで欲しい。」

 副機長は、言われるままに、

スチワーデス用のスイッチを

また入れた。




スチワーデスのチャンは、

座席にぐったりと座り込んでいたが、

受話器を恨めしい目で見つめて、

耳に当てた。

 しどろもどろの

副機長の声がする。

また、一言だけ返事をして

受話器を切った。

 シートベルトをはずし、

さっき助けてくれた水色の目をした、

「赤毛の外国人」の所に歩いて行った。

 傍に行き、

目を閉じた顔に話しかけた。

水色の目が、薄く開いた。

その水色を見ると、

少し気分が晴れて来た。

「お客様、

誠に申し訳ございませんが、・・・

副機長が、・・・

お客様に用事があると

申しております。

恐れいりますが、

操縦室まで

御足労願えますでしょうか?」

「オレに?なんだろう?

……よし行こう。

二度の急降下をやった奴の

顔が見たい!」

 ダニーは、二人にそのことを告げて、

操縦室の前まで来た。

 扉の上のボタンをスチワーデスが押し、

扉が開かれた時、

二人は

とんでもない光景を見てしまった。


 パーサーが床に倒れ、

機長は操縦席から

落ちかけの状態で傾き、

副機長は顔を血だらけにし、

しかも、

覆面の男が二人、

ジャックナイフを持って

立っていたのだ。

 スチワーデスのチャンは、

その場に座り込んでしまい、

泣き崩れた。

ダニーは

ぎょろ目の男の手招きで、

パーサーを跨(かつ)いで中に入った。

ぎょろ目はスチワーデスに、

扉の外で待っているように言って、

扉を閉めた。

「なるほど、

こういうことだったのか、

さっきの二回の急降下は……。

どうするつもりなんだ、

ハイジャックをして……いいことはないよ。

たいがい、こういう犯人は捕まるんだ・・・。

それでも続けるつもりかい?」

「だまれ!

かってにしゃべるな!」

 ぎょろ目の男が怒鳴った。

「分かった。しかし、

君達がオレを呼んだんじゃないか?」

「そうだ!しかし、

今から理由を言おうとしていたのに、

お前がしゃべりすぎるからだ。

……実はお前に頼みがある。

オレ達は中国から脱出して、

ビルマのランクーンまで行く。

しかし、

機長は「突然意識不明」になり、

副機長は英語ができず

「交信」できない。

君に交信を頼みたい。」

「いやだ!

やればオレも犯罪者になる。」

「なにを!」

 ぎょろ目の男は、

ジャックナイフの腕に力を込め、

ダニーに突き刺そうとした。

「やめてくれ!

殺しちゃいけない!

人を殺せば、

マオ主席と同じレベルの

人間になってしまう!」

 突然の眉太の男の言葉に、

ダニーもぎょろ目の男も、

叫んだ男を見つめた。

「ダニーさん・・・、私です。」

そう言って、男は覆面を外した。

「『リー・ズンシィン』です。

内モンゴルの収容所に

『下放』によって、送られていた

リー・ズンシィンです。」



 ダニーは、北京に来る前日の、

高い塀で囲まれた、

凍て付く中庭を思い出した。

マオツオトンジュウシ

(毛沢東主席)の陰謀(いんぼう)を

語ってくれた

『リー』に間違いなかった。

「君がどうしてこんな所に……。」

「マオ主席の、

一挙一動すべてが狂っている。

……彼は第一期の紅衛兵を

すべて下放し、

次に第二期の紅衛兵のすべてを、

抹殺し、

そして今度は、

『広州』で活動が活発になった

第三期の紅衛兵を、

第一期の我々に

『虐殺』(ぎゃくさつ)することを

命じたのだ。

彼は狂ってる!……」

「リー!

……オレはマオツオトン主席に

会ったよ」

 ダニーのこの言葉に、

リーは驚愕(きょうがく)した。

「マオ主席は確かに狂っている。

彼は麻薬のような

ポーリーティー(普茶)を

飲み続けている!」

「ポーリーティーを!

……あれは・・・、

『苗』をすべて中国から絶滅させた、

と発表されている。

『アヘン』や『覚醒剤』と同じく……。」

「いや、オレも飲んだ。

今朝も飲んだ。

麻薬だとは知らずに……。

さっきまで体が火照り、

夢心地だった。

今もそれを身体が求めている。

彼は確かに狂っている。

……しかし、オレ達は

彼と契約を結んだ。

オレ達が掘り込まれていた収容所脱走と、

ソ連からの脱出を手伝ってくれた

『光子さん』を助ける為の契約だ。」

「お願いです。僕達を助けて下さい。」

 リー・ズンシィンは

床に両手と頭を付けた。





数秒して

ダニーが言った。

「分かった。なんとかしょう。

しかし、その前に、

機長とパーサーの様態を診なければ……。」

 ダニーの目が、

ぎょろ目の男を見詰めた。

男はたじろいたが、

つぶやくように言った。

「いいだろう。しかし、

あくまでもオレがボスだぜ!」

「分かった。早速だが、

ツレのビルを呼んでほしい。

彼なら

なんとか二人を診てくれるだろう。」

ぎょろ目は、

扉の外のスチワーデスに、

ビルを呼ぶように命じた。

スチワーデスは、震えながら、

ファーストクラスの方に歩いて行った。

ビルが操縦室の中に入って来る前に、

ダニーの指示で、

機長が椅子から降ろされ、

パウサーの横に並べられた。

ビルが操縦室前に来たとき、

ダニーが英語で簡単に説明した。

ビルは、驚きを潜めて中に入り、

すぐに機長の服を脱がせ、脈をとり、

心臓に耳をあて確認した。

「だめだ、ダニー。

不整脈で、

しかも静止秒の方が長い。

左・右脚ブロックで……

分かりやすく言えば

『心筋梗塞』(コウソク)だ。」

「なんとかならんか?

君はアメリカで、

いろんなバイトをしたって

言ってたじゃないか。

……病院の看護師や、

それに、オックスフォード大の

ローズ財団の留学試験も、

心臓に関する試問で

合格したんだろう?」

「それはそうだが、

この場合は、

専門医が切開して

初めてできる代物だ。

この機内じゃ、むりだ。

心臓マッサージの手もあるが、

それで、元にもどるほど、

並じやない。」

 ビルが述べた内容をダニーは、

ぎょろ目の男に中国語で説明した。

ぎゃろ目の男は、

みるみる青白い顔になっていった。



操縦室に、

絶望的な沈黙が流れた。




その時、

ビルが叫んだ。

「そうだ!

パープルだ!

パープル・サンフラワー・

栗須(くりす)ならできる!」

「パープル・栗須が?」

「彼を呼んでほしい。」

 ダニーは、ぎょろ目に通訳し、

「O・K」をとって、

扉の外のスチワーデスに、

もう一人のツレを

連れて来てくれるように頼んだ。

そして、頬に優しくキスをした。

それまで震え続けていたチャンは、

頬に笑みを作ろうと努力しながら、

栗須のいるファーストクラスの方に

歩いて行った。




栗須は、眠っていた。

心地良い眠りだった。

ポーリーティーが、

彼にはまだ残っていたのだ。

チャンに揺すり起こされて、

操縦室まで揺れながら歩いて行った。

飛行機は順調に飛んでいたが、

彼の身体が眠っていた。

 扉の前に来たとき、

ダニーが英語で中の状態を説明した。

聞いて頭の中で理解できない状況は、

中を覗くという動作で

すぐに認識された。

「パープル、君には、

この機長の心臓を

治すことができるだろう?」

 ビルのこの言葉に、

栗須は戸惑った。

「ほら、パープル!

君が盲腸の手術後、

ハバロフスクの病院で、

君の心臓を止める薬を飲んだって、

そう言ってたろう……?」 「何時?」

「北京の『中南海』で……」

 栗須の頭の中に、

シベリアの収容所から

ハバロフスク病院での出来事が、

思い浮かんだ。

「思い出した!

ぼくの頭はどうかしていた。

『プッリーヨチェ』だ!

オットセイの胃袋にある

海藻から作られた

『妙薬』だ!

あれは心臓を止めて

仮死状態に出来るし、

止まった心臓を、

ニトロで爆発させたように

動かすこともできる。」

 栗須は子供のようにはしゃいだ。

『光子』の父『ドクター荻野』が、

脱走中に起きるべき状態を想像し、

光子と栗須に手渡していた。

「今出すけど、

僕の方を見ないでくれ!」

「どうして?」

「……ウ~~、実は……

お恥ずかしいが、

パンツの……ゴムの……穴の……

中に入れてあるんだ。」

 栗須の照れた仕種と言葉に、

ビルとダニーは

声を出して笑いだした。

そして、ダニーは笑いながら、

中国語に内容を訳した。

 その瞬間

ぎょろ目の男も眉太のリーも、

また、副機長までが笑いだした。

栗須はベルトを外し、

モゾモゾしていたが、

油紙に巻かれた、

小さな黒いダイヤモンドのような粒を

取り出した。

「心臓を動かすには、

この小さな一粒で十分だ。」

そう言いながら栗須は、

機長の両頬を押さえながら

口を開けさせ、

舌の下にその粒を含ませた。

 次に、

パーサーの脈と目を見て、言った。

「気絶しているだけらしい。」

 ダニーが中国語で通訳すると、

リーが口を挟んだ。

「気絶だけなら、僕に出来る。」

 リーは、パーサーの上半身を起こし、

背に回って両肩を持ち、

膝を背骨に当てた。

そして、一声叫んで力を込めた。

パーサーは、突然、

あの世から蘇(よみがえ)ったように、

目を白黒させて辺りを見回した。

ぎょろ目の男が言った。

「扉の外で、スチワーデスと一緒に

待っててくれるかい?」

 パーサーは、

何度もうなずきながら出て行った。

「さあ、それじゃ、

『ビルマのラングーン』行きに

取り掛かるか。」

 ダニーが、

『IL62』の副機長に言って、

サイドポケットに掘り込まれていた

地図を取り出し、

機長の椅子の上に広げた。

「今どこを飛んでる?」

「広東辺りです。」

 ダニーが、

眼下の地形と地図を見比べた。

「あれは何だ!」

 ビルが叫んだ。



田畑らしい緑が続く中に、

時々、丸い円形の物体が見える。

リーが英語で言った。

「あの円形の建物は

『円楼(えんろう)』です。

一族郎党すべてが

あの円形五階建ての建物の中に

住んでいます。

五百人近い人間が

真ん中の先祖の霊を

奉った寺を

取り囲むように住んでいます。

ちょっとした町と同じです。

……昔、

あれが『円盤の基地』ではないか、

と言われたこともある。

……フォンはそこの出身で、

北京大学を首席で卒業した。」

 そう言いながらリーは、

ぎょろ目の男を見た。

男は戸惑った様子だったが、

覆面を外した。

ぎょろ目だが、ほっそりした

精悍(せいかん)な顔立ちだった。



『ぎょろ目のフォン』は、

口を何度か震わせながら、

中国語で話し出し、

リーが英語に訳した。






 2 ハッカ(旅する人)の

呟(つぶや)き



「この辺りは、・・・

オレの故郷だ!

もうすぐ、オレの住んでいた

『円楼(えんろう)』が

見えるだろう。

……オレ達一族は、

北方の『漢民族』だ。

一千二百年前、

『秦の始皇帝時代』に

この地に出兵して住み着いた。

オレ達の先祖は、

『旅する人』という意味で

『ハッカ』と言われ、

あの『円楼』の中で生活し続けた。」

 『ぎょろ目のフォン』は、

息を吸って、

また続けた。

 「同族であるために

『円楼』内同士は、

結婚出来ない。

何十キロも離れた

他の『円楼』から

嫁をもらう。

『円楼』は、この地方だけで

百は越えるぐらいある。

俺の祖父にあたる

『孫文(革命の父・

国父と呼ばれていた)』も

『ハッカ』だ。

今は失脚している

『トンシアオピン(鄧小平)』も

『ハッカ』だ。」

 息を吸って、

三人の目を見ながら続けた。


 「『ハッカの願い』

を知っていますか?

『円楼』を出て、

『科挙(かきょ・

官吏の採用試験)』等に合格し、

政治の中心で活躍し、

どんなことがあっても

『円楼』を存続させることなんだ。

……オレも

『ハッカの願い』を込めて

北京大学に合格した。

しかし、……」

 『ぎょろ目のフォン』は、

今度は、天井を見つめて叫んだ。

 「この『文化大革命』によって

『下放』し、

今度は、同じ一族の血が流れる

『ハッカの紅衛兵』を、

オレの手で

『抹殺』せねばならない!

オレには出来ない!

……今オレに出来ることは、

中国を出ることだけだ。

……いつか、戻れる時があるなら、

オレは……!オレは……

『ハッカの願い』をこめて

オレの全エネルギーを費やすのだ。」

 フォンは、

突然、鳴咽(おえつ)した。

そして、ぎょろ目から、

大粒の涙が、ほとばしった。

 その大粒の涙を見て、

全員がアッ気にとられていた時、

無線に雑音が入り、

中国語が聞こえてきた。






「……イリューシン機、応答せよ!!



……イリューシン機、応答せよ!!



……君の機は、



航路より逸脱(いつだつ)している。

すぐ確認し、

正常に運航せよ。

イリューシン機、

聞こえるか?

君の機名を述べよ。

コールナンバーを述べよ。

応答せよ。…………



どうなってるんだ……。」



 無線が切れた。



「どうすればいいの?」

 副機長が、

今度は大粒の涙を流し始めた。

その為に、エンジンレバーが前後し、

飛行機は不自然な動きをした。



ダニーが叫んだ。

「ビル!お前さんが操縦しな!」

「ばかな!

ぼくはやったことが一度もない。」

「だからやってみるんだ。



 『すべては、一度目から始まる。』



 って、格言を

聞いたことがあるだろう?!」

 ダニーは、ビルを無理矢理に

機長席に座らせた。

「副機長、教えるんだ!」

 ダニーの今までにない、

鋭い声が飛んだ。

全員がその声に驚いた。

「エンジンレバーを持って、

前に押せば……ほら、

尾翼が下がって下にさがる……、

手前に引けば、……」

「分かった。

遊園地の例のマシーンと同じだ。

アルバイトで、

これもやったことがあるよ。」



「イリューシン62!応答せよ。

機長何をやっとる!……」



後方を見ると、

フランス製のジェット戦闘機だが、

青空の中で

黄色の星に赤く縁取ったマークの付いた

解放軍機が二機、

近付いて来るのが分かった。



 突然、

その解放軍機から、

威嚇(いかく)射撃が始まった。

銃弾は『IL62』の脇をなめる。

 ビルは、エンジンレバーを

前方に思い切り押した。

『IL69』はまたも急降下を始め、

高度計がみるみるうちに

下降方向に位置しだした。



 突然、

「円楼」が前方に出現した。

巨大な円盤のように見える。

 三十メートル程の高さの、

半径は優に百メートルを越える

「円楼」だった。

ビルは、

エンジンレバーを

少しだけ手前に引いた。

「IL62」は、

地上数百メートルを水平に飛びだし、

「円楼」の真上を

通り過ぎようとする。

間違いなく、

フォンが生まれ育った

「円楼」だった。

「円楼」の一つ一つの扉や人間が、

肉眼でみえ、

子供達が「円楼」から飛び出してきて、

手を振る。

『フォン』が

この「円楼」を

旅だった時と同じように……。

 『フォン』は、下唇を噛みしめた。

その時、また涙が、

彼の眼から流れ落ちた。

『フォン』はこの時、

心に固く誓って、

呟(つぶや)いた。




「必ず、この地に

『ハッカ(旅する人)の願い』を

果たして、戻って来る。」




「IL(イリュウション)62」は、

『ハッカ(旅する人)の願い』を乗せて、

ひたすら低空飛行で、

中国大陸を南下していく。

しかし、

後ろからは、

「どう猛な獣たち」が

襲いかかってきた。







    第十三章 『 飛べ!低く飛べ! 』に 続く
    


このWebサイトについてのご意見、

ご感想、メッセージは、



でお送りください。




第一章   白夜のささやき

        (公開中)


第二章   カットグラスの輝き

        (公開中)

第三章   裁き

        (公開中)

第四章   轟(とどろ)き・・・

(ダニーの話)

        (公開中)

第五章   ラーゲルの吹雪(ふぶき)

        (公開中)

第六章   殺人の痕跡・・・

(ドクター荻野の話)

        (公開中)

第七章   「アッシュ」の手引き・・・

(ビルの話)

        (公開中)

第八章   偽装の閃(ひらめ)き

        (公開中)

第九章 ダイヤモンドダストの

 瞬(またた)き

        (公開中)

第十章   若き紅衛兵の嘆き

        (公開中)

第十一章  マオ・ジュウシの駆けひき・・・

(五人めの妻の話)

        (公開中)

第十二章 ハッカ(旅する人)の

 呟(つぶや)き

        (公開中)

第十三章  飛べ!低く飛べ!

(チェ・ゲバラの話)

        (公開中)

第十四章  リビアンスター

(リビアの星)

        (公開中)

見出しページ



「小説」の見出しページ



トップページ