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『 1年2組 学級日誌 』 (新長編小説) 
      ・・・半世紀前の女子高校の学級日誌・・・
        (昭和47〈1972〉年4月~48年3月まで)

  
  






【4月18日(火)晴 9番O・A】

 私は詩が好きです。

ゲーテ・ボードレール・

ハイネ・バイロン・

シュトルム・ランボー・

リルケ・ヴェルレーヌ・ヘッセ・

ホイットマンの詩人が書いた本を

だいたい読みましたし、

又、自分で書いています。

 私は小説も好きです。

『戦争と平和』・

『ロミオとジュリエット』・

『オリレランの少女』・『デカメロン』・

『ラブストーリィ』・『初恋』などが

好きです。

 私の好きな詩をプレゼントします。


   “つぼみひらく” ハイネ  

      つぼみひらく  鳥うたう 
       妙なる五月   妙な五月 
       こころにも   よきひとに 
      恋ほころびぬ  おもいかたりぬ 


  “なみだより” ハイネ

なみだより    情あらば
花はもえいで   花をおくらむ
ためいきも    まどべには
しらべとぞなる  うたもうたはむ


 喜び勇んで「JK」の門をくぐって

もう2週間になろうとしている。

中学からただ一人で、

この学校にきた。

私は心細い毎日を送っていたのは、

つい5~6日前。

今ではM先生を初め2組の

みんなが私の友達です。

私はもう心細くなんかありません。

心を弾ませながら授業を受けています。

後は、良いクラブを見出して入部する

つもりです。

M先生は私のお兄さんのような気がします。

なんでも打ち解けられそうな気がするから。

 今度この日誌が回ってきたら、

自分の詩を書きます。

おやすみPM 10:00


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実は、ぼくは、一人の生徒を

泣かしてしまった。

それは、まったくの誤解が誤解をうんで、

そうなってしまった。

その生徒は、

自分が思いこんでいた事が

誤解だと分かって、

後で笑い顔を見せてくれた。

ぼくは嬉しかった。

自分一人で思い込んだり、考え込んだり、

悩んだりせずに、何時でも人に

話してほしい。

誤解することは、実に恐ろしい。


 君は詩を書いているそうだが、

ぼくも詩を書いている。

が、ぼくの詩には、韻律(リズム)がない。

三好達治の『測量船』という詩集の中に、

「雪」という二行の詩がある。


「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。

次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。」


ぼくは、、この詩の韻律が

羨(うらや)ましい。

眠っている太郎と次郎の家の屋根に

雪が降り続け、

それは、別の家の三郎や四郎の家の

屋根にも、

そして、雪国のどの屋根にも

雪が降り続いている、

永遠に。

たった二行の詩なのに、

僕達の心の中に、

余韻を残して永遠に雪を降らせる。

しかも、濁音(だくおん)は、

「次郎」の「じ」だけ。

濁りや曇りのない、清んだ音を

感じさせる。

しかも、

八・七・六語調にしているから、

滑(なめ)らかに口からでてくる。

すごいね。韻律が羨ましい。どう思う?


今日、髪型検査があった。

学年全部の先生方で見て行くので、

不平等はないと思う。

やっぱり、決められたことは、

まもった方が良いと思う。

注意されると嫌な気分になる。

君は、されていなかったと思うけど、

これからもそうしてほしい。

毎日、楽しく学校生活を過ごすために。

             以上


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